まあるくなった

「まあるくなった」：家族の絆を歌った、鹿児島県の歌

1966年11月5日、国民的歌手・坂本九のシングルとして発売された「まあるくなった」は、鹿児島県で制定された「家庭の日」のテーマソングとして知られています。作詞は滝田常晴氏、補作は永六輔氏、作曲と編曲はいずみたく氏と、そうそうたるメンバーが制作に携わった楽曲です。

「家庭の日」は、1955年に鹿児島県薩摩郡鶴田町（現在のさつま町）で始まりました。農作業に忙しく家族と過ごす時間が少なくなっていた農業従事者たちの生活を背景に、家族の絆を取り戻すことを目的として、毎月第3日曜日が「家庭の日」と定められたのです。

この取り組みは、1965年には県全体へと広がり、同年発表された南日本新聞の県下10大ニュースで1位を獲得するなど、大きな注目を集めました。

1966年には、総理府外郭団体である青少年育成国民会議の設立を機に、鹿児島県の「家庭の日」は全国的なモデルとして注目を集めます。そこで、県は「家庭の日の歌」を制作することを決定。永六輔氏を審査員に迎え、歌詞の懸賞募集を実施しました。

全国から6500編を超える応募が集まった中から選ばれたのは、新日本製鐵名古屋製鉄所社員の滝田常晴氏による作品でした。永六輔氏による補作を経て、いずみたく氏の作曲によって完成したこの楽曲は、同年11月16日、鹿児島県文化センターの柿落としを兼ねた発表演奏会で、高松宮宣仁親王の臨席のもと初披露されました。

「家庭の日の歌」は、鹿児島県以外にも秋田県、群馬県、静岡県などで制作されましたが、「まあるくなった」は、坂本九という国民的歌手による歌唱、そして「家庭の日」発祥の地である鹿児島県での熱心な普及活動により、県内で広く親しまれることとなりました。特に戦後復興期に制定された県民歌に代わるものとして、学校教育を通して熱心に普及指導が行われたことが、その浸透に大きく貢献しています。

その人気は衰えることなく、2011年には県のPR活動の一環としてCD音源化もされました。現在でも、鹿児島県民にとって「まあるくなった」は、家族の絆、そして故郷を思い起こさせる大切な楽曲として、記憶され、歌い継がれているのです。

参考文献

西尾示郎『青少年問題読本 非行の追跡』（毎日学生出版社、1966年）
鹿児島県議会事務局『四カ年の歩み 議会と県政』昭和38年4月〜昭和41年9月（鹿児島県議会事務局、1967年）
静岡県企画調整部 編『県政概要』昭和44年版（静岡県、1970年）
秋田市史編さん委員会 編『秋田市史 昭和編年表』（秋田市役所、1979年）
『宣仁親王略御年譜』第6巻 昭和41年-昭和46年

関連項目

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