まつうら型巡視船

まつうら型巡視船の概要

まつうら型巡視船は、海上保安庁が運用していた巡視船です。1968年にはPS型からPM型に分類変更されています。公称船型は改2-350トン型で、主に日本の沿岸警備に貢献しました。本型は、先行するやはぎ型（改350トン型）巡視船をベースに、対馬海峡での哨戒任務に対応するため、速力向上を図った発展型として建造されました。

開発の経緯

海上保安庁設立当初に就役した270トン型巡視船は、荒天時の揺れが大きすぎるという課題を抱えていました。この問題を解決するため、まず「てしお」では横揺れ周期の延長を試みましたが、効果は限定的でした。その後、やはぎ型では船体の拡幅と横断面の変更を行い、横揺れ性能の大幅な改善に成功しました。やはぎ型は6隻建造され、その優れた性能は高く評価されました。まつうら型は、やはぎ型をベースに、さらに速力を向上させた発展型として計画されました。

設計の特徴

まつうら型は、やはぎ型と同様の平甲板型船型を採用しています。高速化のため、船体を5メートル延長し、幅を0.3メートル狭く設計されました。しかし、高速化による動揺性能の悪化を防ぐため、重量や重心位置の検討は非常に綿密に行われました。横メタセンタ高さ（GM値）は常備状態で0.78メートルと設定されています。また、重心位置を下げる工夫として、機関室囲壁を廃止して天窓とし、ボートダビットも新三菱式デッキタイプ・グラビティ・ダビットを採用するなど、詳細な設計が施されました。船体構造は横肋骨式で、溶接構造が主体となっています。方形係数は0.483です。なお、北方配備を考慮していなかったため、耐氷構造は採用されていません。2番船「せんだい」は、巡視船として初めて士官室と科員室に冷房が設置されたことで知られています。

機関と兵装

主機関は、1番船と2番船では6MSB31Sディーゼルエンジンを搭載していました。その後、改良が重ねられ、3番船と4番船では出力向上型の6MSB31HSエンジン（単機出力900馬力）、5番船ではさらに大出力の6MA31Xエンジン（単機出力1,300馬力）が搭載されました。

兵装に関しては、当初は60口径40mm単装機関砲が予定されていましたが、供給不足のため、実際には20mm単装機関砲が搭載されました。昭和36年度計画以降の船からは、最初から20mm単装機関砲を装備する計画となりました。

まとめ

まつうら型巡視船は、荒天時の動揺問題への対策、そして対馬海峡での哨戒任務への対応という二つの課題を克服すべく開発されました。設計段階から綿密な検討が行われ、機関や兵装においても改良が重ねられていきました。本型は、海上保安庁の巡視船の進化において重要な役割を果たした船級と言えるでしょう。その設計思想や技術的特徴は、後続の巡視船の開発にも大きな影響を与えたと考えられます。また、各船の差異についても、機関出力や装備の変遷を通して、当時の技術状況や運用上のニーズを反映している点が興味深いと言えるでしょう。

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