まどろみ消去

まどろみ消去

森博嗣による初の短編小説集『まどろみ消去』（Missing Under The Mistletoe）は、日常に潜む謎と、人間の心の奥底を描き出した作品集です。全11編の書き下ろし短編は、それぞれ独立した物語でありながら、森博嗣独特の哲学とユーモア、そしてミステリー要素が巧みに絡み合い、読者を魅了します。

収録作品

虚空の黙祷者: 殺人容疑で失踪した夫、その友人の息子からのプロポーズ。ミドリを待ち受ける真実とは？
純白の女: 人里離れた場所で、夫に手紙を書き続けるユリカ。その手紙に込められた想いとは？
彼女の迷宮: 作家である夫の小説を、サキは書き換えてしまう。物語が暴走する先にあるものは？
真夜中の悲鳴: 大学院生のスピカは、実験で奇妙な現象を発見する。それは世紀の発見か、それとも？
やさしい恋人へ僕から: 同人活動を通じて出会ったスバル氏と意気投合する「僕」。二人の関係は深まるのか？
ミステリィ対戦の前夜: ミステリィ研究会の合宿に参加した西之園萌絵。部員たちの競作ミステリィ談義にうんざりする彼女を、ある事件が待ち受ける。
誰もいなくなった: ミステリィツアーに参加した萌絵たち。屋上で死体（役）を取り囲んで踊る30人のインディアンを目撃するが、一体何が起こったのか？
何をするためにきたのか: 平凡な学生生活を送るフガク。謎めいた言葉を残す友人・ワタル。彼は一体何のためにここにいるのか？
悩める刑事: 推理小説マニアの妻を持つ刑事モリオ。仕事に悩む彼と、希望部署への配属が決まった妻キヨノ。夫婦のすれ違いが描かれる。
心の法則: モビカ氏の紹介で、モザイクアートが趣味の姉に出会った「僕」。彼女に惹かれていく「僕」が見つける心の法則とは？
* キシマ先生の静かな生活: 研究一筋のキシマ先生。彼は計算機センターの沢村さんに恋心を抱いているらしい。そんなキシマ先生の静かな生活を垣間見る。

作品の特徴

収録された短編は、ミステリーというジャンルでありながら、登場人物たちの心理描写や人間関係に重点が置かれています。森博嗣ならではの独特な文体と、哲学的な視点が、物語に深みを与え、読後には様々な感情が湧き上がってくるでしょう。また、各作品には、伏線やトリックが巧妙に仕掛けられており、ミステリーファンも唸らせる内容となっています。

魅力

本書の魅力は、日常に潜む非日常的な出来事を、鮮やかに描き出している点にあります。何気ない日常の中に、ふと現れる違和感や謎。それらが徐々に大きくなり、やがて事件へと発展していく過程は、読者を飽きさせません。また、登場人物たちの個性的なキャラクターも魅力的です。彼らの思考や行動を通して、人間の本質や社会の歪みが浮き彫りになり、考えさせられることが多いでしょう。

挿絵・解説

山田章博によるイラストは、各作品の雰囲気をより一層引き立てています。また、巻末には、森博嗣が敬愛する漫画家・萩尾望都による解説が収録されており、作品に対する深い洞察が述べられています。これらの要素が、本書の価値を高め、読者をより深く『まどろみ消去』の世界へと誘います。

『まどろみ消去』は、ミステリーファンだけでなく、文学作品としても楽しめる一冊です。ぜひ手に取って、森博嗣ワールドを堪能してください。

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