森博嗣

森博嗣：理系ミステリーの旗手、多彩な才能

森博嗣（もり ひろし）は、1957年愛知県生まれの日本の小説家、随筆家、工学者です。名古屋大学大学院で工学博士号を取得後、大学教員として教鞭を執る傍ら、小説家としても活躍しました。その作品は、理系的なバックグラウンドを生かした独特な世界観と、緻密な論理構成で多くの読者を魅了しています。

デビューと作風

1996年、『すべてがFになる』で第1回メフィスト賞を受賞し、華々しいデビューを飾りました。同作は、密室で起こる不可解な殺人事件を、天才的なプログラマーである女子学生と、建築学科助教授の犀川創平が解決していくというストーリー。従来のミステリーにはなかった斬新な設定と、論理的な推理展開が話題を呼びました。

森博嗣の作品の特徴は、以下の点が挙げられます。

理系ミステリー: 科学的な知識や技術が物語の重要な要素として登場し、緻密な論理に基づいて謎が解き明かされていきます。
カタカナ表記: 外来語のカタカナ表記において、音引きを省略する独自のルールを徹底しています。例えば、「ミステリー」を「ミステリィ」と表記するなど、独特の語感が生まれています。
引用: 多くの作品で、扉や巻頭に引用文が掲載されています。引用元は、専門書から古典文学まで多岐にわたり、作品のテーマや構成と深く関連しています。
多ジャンル: 推理小説だけでなく、SF、幻想小説、架空戦記、剣豪小説など、幅広いジャンルに挑戦しています。

大学教員から作家へ

デビュー後も大学教員として勤務しながら、精力的に執筆活動を続けました。2005年に名古屋大学を退官し、作家業に専念。その後も、『スカイ・クロラ』シリーズ、『Gシリーズ』、『Xシリーズ』など、数多くの人気シリーズを生み出しています。

多彩な趣味と活動

森博嗣は、小説家としての活動だけでなく、多岐にわたる趣味を持つことでも知られています。特に有名なのは、鉄道模型と庭園鉄道です。自ら設計・製作した車両を走らせる本格的な庭園鉄道「欠伸軽便鉄道」は、多くの鉄道ファンから注目を集めました。

また、自動車や音響装置にも造詣が深く、ホームページやエッセイでその知識や情熱を披露しています。

交友関係

同時期にデビューした京極夏彦や、森の影響を公言する西尾維新、哲学者の土屋賢二らと親交が深く、対談や共著も発表しています。また、清涼院流水が立ち上げた作家の英語圏進出プロジェクト「The BBB」にも参加し、自作の英訳にも取り組んでいます。

学術的な業績

専門は建築材料の数値解析で、コンクリートの流動解析に関する研究で工学博士号を取得しています。1988年には、セメント協会論文賞を受賞するなど、研究者としても高い評価を得ています。

執筆活動の縮小と現在

デビュー当初から執筆活動を「ビジネス」と割り切っていた森博嗣は、2008年に執筆活動の縮小を発表しました。しかし、その後もエッセイやノンフィクションの執筆を続け、2013年には新作小説を発表するなど、現在も創作活動を続けています。

森博嗣は、理系的な知識と論理的な思考を基盤に、ミステリー小説の新たな可能性を切り開いた作家です。その作品は、緻密な構成と予測不可能な展開で、読者を飽きさせることがありません。また、多岐にわたる趣味や活動を通して、独自のライフスタイルを追求する姿は、多くの人々に刺激を与え続けています。

代表作

すべてがFになる
スカイ・クロラ
女王の百年密室
Gシリーズ
Xシリーズ

受賞歴

1988年 セメント協会論文賞
* 1996年 第1回メフィスト賞（すべてがFになる）

もう一度検索