西之園萌絵
西之園萌絵(にしのその もえ)は、
森博嗣氏による
推理小説シリーズに登場する架空の人物です。「
S&Mシリーズ」の
主人公であり、「Gシリーズ」の主要人物の一人として、多くの作品で重要な役割を担っています。
真賀田四季と並び、森作品において複数のシリーズで活躍する
ヒロインとして、読者に強い印象を与えています。
人物
萌絵は「
S&Mシリーズ」では国立N大学
工学部建築学科、「Gシリーズ」では同大学大学院工学研究科建築学専攻犀川研究室に在籍し、後に東京の私立W大学へ移籍します。その美貌は周囲の目を引き、作中では多くの男性から好意を寄せられますが、彼女自身は幼い頃から知る犀川創平に一途な想いを寄せています。初めて会った時、犀川に対し「自分より頭の良い大人を初めて見た」という印象を抱きました。
彼女の特筆すべき点は、優れた洞察力、観察力、そして驚異的な記憶力と計算能力です。しかし、その思考は時に極端に飛躍するという特徴も持ち合わせています。犀川は彼女の思考形態を「コンピュータの演算処理」に例え、その指向性の特異さと並外れたスピードを指摘しています。また、彼女は旺盛な行動力を持ち、犀川と共に数々の難事件を解決に導きます。感情を前面に出し、事件解決に臨む彼女の姿勢は、
真賀田四季からも高く評価されています。
合気道を嗜み、その腕前を披露する場面も描かれています。頭脳明晰で成績優秀な一方、世間知らずな一面も持ち合わせており、焼肉のタレが市販されていることや
焼きそばを食べたことがないなど、周囲を驚かせることもあります。また、洋風な生活様式のためか、和風の行事や習慣に疎く、
漢字や故事成語、
ことわざなどを苦手としています。これらの言動は、彼女のお嬢様育ちを象徴するものとして、周囲をあきれさせることもありますが、徐々に人との付き合い方に馴染んでいきます。酒は好きですが弱く、すぐに酔ってしまいます。
コーヒーはブラック派ですが、猫舌のため完全に冷めていないと飲むことができません。恵まれた家柄と容姿を持つ才媛ですが、料理は苦手です。
両親の遺産である高層マンションの最上階に、執事の諏訪野と愛犬の
シェットランド・シープドッグである都馬(トーマ)と共に暮らしています。また、ボクスターや
ポルシェなど5台の高級車を所有する車好きでもあり、車の知識にも精通しています。車を運転する際には音楽を聴かず、エンジン音を好んで聞き、機能性よりも好みの車を選ぶ傾向があります。
弓道などの試合では集中力を発揮し好成績を収めますが、体力はなく、西之園家代々の貧血気味であるため、徹夜などをすると倒れてしまうことがあります。
経歴
3歳の時に
真賀田四季と出会いますが、萌絵自身はその時の記憶を持っていません。小学5年生の時に犀川と出会い、自作のマジックを見破られたことがきっかけで親交を深めます。高校2年生の時、両親を航空機事故で亡くし、その事故を犀川と共に空港で目撃したことが、彼女の人生に大きな影響を与えます。事故後、髪を短く切り、服装や化粧が派手になり、性格も攻撃的になりましたが、犀川は彼女の本質的な部分は変わっていないと見抜いています。
中高一貫の女子校を経て、犀川のいる国立N大学
工学部建築学科へ進学します。大学では、指導教官となった犀川に強い恋愛感情を抱きますが、犀川は彼女への庇護者意識との間で葛藤します。大学ではミステリィ研究会に所属するほか、複数のサークルに籍を置いています。
航空機事故を境に彼女の心の中に生まれていた壁は、長い間、彼女が両親の死と向き合うことを阻害していました。「
S&Mシリーズ」では、事件被害者に対し自身の境遇を照らし合わせ、好奇心で相手のことを打ち消してしまっていましたが、「Gシリーズ」において遂にそれを乗り越え、純粋に被害者を悼むことができるようになります。「
S&Mシリーズ」では、好奇心から事件に首を突っ込み危険な目に遭うこともありましたが、「Gシリーズ」では後輩ができ、自身も研究室入りしたことで落ち着いた大人の女性となります。この頃には「Vシリーズ」にも登場しており、保呂草潤平は萌絵のパーソナリティの中に、瀬在丸紅子との共通点を見出していました。
「Gシリーズ」作中では、N大の大学院博士課程2年次に助手の話があり移籍し、後に私立W大学の准教授となります。准教授になった頃には、同時系列である「
Xシリーズ」にもたびたび登場し、事件を解決に導いています。恋愛においては、周りに分かりやすすぎるほど犀川にアピールをしていましたが、彼の鈍感さに激昂することも少なくありませんでした。しかし、萌絵が内面的に成長し、犀川もそれを受け入れることで、「Gシリーズ」では二人の関係が発展し、恋人関係と見られるようになります。
「
S&Mシリーズ」では、遭遇する事件のほとんどが密室殺人であるため、警察内部では「密室殺人なら西之園萌絵」という印象が出来上がっており、たびたび協力を求められています。
登場作品
S&Mシリーズ
Vシリーズ(「捩れ屋敷の利鈍」のみ)
四季シリーズ
Gシリーズ
Xシリーズ
短編
まどろみ消去
地球儀のスライス
今夜はパラシュート博物館へ
虚空の逆マトリクス
レタス・フライ
シリーズ外の小説
歌の終わりは海
キャスト
声優
小林沙苗(2002年PlayStation用ゲーム版)
種﨑敦美(2015年テレビアニメ版)
俳優
武井咲(2014年テレビドラマ版)
*
内田愛(2014年テレビドラマ版・少女期)