むち (楽器)

むち（鞭）

むち（鞭）は、打楽器の一種であり、鞭が打たれる音や振られる音を模倣した効果音を発する楽器です。体鳴楽器に分類されます。

各国語での表記

英語：slapstick, whip
ドイツ語：Peitsche
フランス語：fouet
イタリア語：flagello, frusta

構造と発音

一般的には、2枚の細長い木板の一端を蝶番で留めた構造をしています。この木板を打ち合わせることで、鋭い音を発します。この構造から、ドイツ語ではHolzklapperとも呼ばれます。英語ではwhipとも呼ばれます。

日本語では同じく「むち」と訳される楽器に、ドイツ語でRuteと呼ばれるものもあります。これについては、ルーテの項目を参照してください。

主な使用楽曲

むちは、オーケストラ楽曲を中心に、効果音として印象的に使用されます。以下に主な使用例を挙げます。

モーリス・ラヴェル：ピアノ協奏曲
冒頭の一撃で使用されます。
ベンジャミン・ブリテン：青少年のための管弦楽入門
グスタフ・マーラー：交響曲第5番、交響曲第6番
ドミートリイ・ショスタコーヴィチ：交響曲第13番、交響曲第14番、交響曲第15番
クシシュトフ・ペンデレツキ：交響曲第1番
冒頭にゆっくりとしたパルスでリズムを刻む長いソロがあります。
湯浅譲二：クロノプラスティク スタシスとキネシスの間で
5人の奏者のうち3人がスラップスティックを、2人が革製の鞭を鳴らし、両者の音色が対比される特徴的な打楽器群ソロがあります。
ヤニス・クセナキス：テレテクトール
88人の管弦楽奏者が観客席にランダムに散らばって演奏する曲で、自分の楽器の他に鞭やウッドブロックを大勢で乱れ打ちに演奏します。
同じ作曲家の同趣旨の曲に『ノモス・ガンマ』がありますが、こちらは鞭などの打楽器持ち替えはありません。
芥川也寸志：『赤穂浪士』テーマ曲
鞭の音が特徴的な音として何度も扱われます。
ルロイ・アンダーソン：そりすべり

参考文献

『打楽器辞典』網代景介、岡田知之著、音楽之友社、1981年、253-254頁

関連項目

鳴子（音具）
近現代の日本の祭において、踊りの際にしばしば用いられます。形状や仕組みはむちと非常に似ていますが、元来は水田の鳥追いのために作られた農具です。第二次世界大戦後に高知県のよさこい祭に使われたのが楽器としての始まりであり、むちとはルーツが全く異なります。

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