むろと (敷設艦)

敷設艦「むろと」

「むろと」（ローマ字：JS Muroto, ARC-482）は海上自衛隊が運用する敷設艦です。この艦名は、室戸岬に由来しており、かつて存在した旧海軍の給炭艦「室戸」の名前を受け継いでいます。日本の艦艇の中でもこの艦は2代目に当たります。笠のように特化した同型艦は存在していません。

概要

「むろと」は、老朽化が進んでいた敷設艦「つがる」（ARC-481）の後を引き継ぐ形で、昭和52年度に計画が立てられました。この艦の主な任務は、水中聴音監視装置を拡充させ、基地や港湾、さらには戦略海域においてその設置を行うことです。また、長距離にわたる敷設作業を効率的に実施できるよう、艦尾には新たに敷設装置が設置されています。これによって、従来型の露出した設置方法ではなく、泥中に埋設する技術が可能となりました。

艦は前後にシーブを備え、大型のケーブルタンクが艦内に用意されています。ケーブルの敷設に関しては、ケーブルエンジンを介して行い、操作時には詳細で繊細な操艦が要求されるため、推進器には可変ピッチのプロペラを採用しています。また、艦首と艦尾にはサイドスラスターも装備されています。これにより、より安定した操作が可能となっています。

さらにこの艦は、海洋観測機器も充実しており、精密測深儀や採泥装置、採水器、測温計といった各種センサーを搭載しています。位置情報を正確に把握するための衛星航法装置や、オメガ、ロランCなどの航法支援装置があるため、航海中のルート管理は中央管制室で一元的に制御されています。この艦の設計は、電電公社の海底ケーブル敷設船「黒潮丸」を参考にしているとされています。

艦歴

「むろと」は、昭和52年度計画に基づき、4,500トン型の敷設艦として三菱重工業の下関造船所で建造が開始されました。起工は1978年11月28日、進水は1979年7月25日、そして1980年3月27日に正式に就役しました。就役後は海洋業務群に編成され、呉に配備されました。

その後、後継艦である「むろと」（2代目: ARC-483）の就役を迎えずして、2012年4月4日に退役するという運命を辿りました。こうした艦艇の運用とその歴史は、海上自衛隊の活動の一端を示しており、今後の海洋防衛における重要な役割を持ち続けています。

参考文献

• - 石橋孝夫著『海上自衛隊全艦船 1952-2002』（並木書房、2002年）
• - 『世界の艦船 増刊第66集 海上自衛隊全艦艇史』（海人社、2004年）

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