もしもピアノが弾けたなら

『もしもピアノが弾けたなら/いい夢みろよ』

1981年4月1日にリリースされた西田敏行のシングル「もしもピアノが弾けたなら/いい夢みろよ」は、作詞に阿久悠、作曲には坂田晃一を迎えた楽曲です。この曲は、西田敏行が主演したテレビドラマ「池中玄太80キロ」の第2シリーズの挿入歌として書かれました。リリース当初、このシングルの主題歌は「いい夢みろよ」でしたが、視聴者からの強い支持を受け、その立場が逆転し、結果的に「もしもピアノが弾けたなら」が主題歌として親しまれることになりました。

歌詞の背景とテーマ

作詞を手掛けた阿久悠は、同時期に行われた『日本作詩大賞』での受賞が注目されましたが、彼の思いはもっと深いところにありました。彼は、不器用で自信のない男性に向けた応援歌を書きたいという願望を持っており、そのテーマ性をドラマの主人公に託しました。歌詞の中に登場するピアノは、まさに「器用さやサービス精神」を象徴すると語られています。

制作過程とアレンジ

坂田がドラマの作曲依頼を受けた際、彼は「詩先」での制作を決意しました。このアプローチは、作詞が先に完成するというもので、日テレのスタッフと共に阿久悠に向かい、その意向を伝えました。坂田は最初から、主題歌と挿入歌の役割を明確に考えていましたが、最終的には逆に販売されるという面白い展開が待っていました。レコーディングでは、西田の音域に合わせたアレンジが施され、彼自身の独自の表現が加わりました。

西田敏行のパフォーマンス

西田は、歌の収録時にオケのみのテープを受け取った後、彼のスタイルでメロディをアレンジしました。坂田は、彼に「キチッとメロディを歌って、思いを込めてほしい」と伝え、再度レコーディングを行い、楽曲が完成しました。また、西田はテレビ番組「ザ・トップテン」において、この曲で初めてランクインし、その際の記念写真撮影にはユニークなエピソードがあります。写真に納得がいかず、3度もの撮り直しを行ったというのです。さらに、1981年末の『第32回NHK紅白歌合戦』にはこの曲で初出場し、その後も1990年には再び同曲を歌い上げることになります。

才能豊かな共演者との関わり

楽曲の録音においては、江草啓介がピアノ演奏を担当しました。江草はその後、映画『ザ・マジックアワー』で西田と共演することになります。また、西田がドラマでパフォーマンスしている際にピアノを演奏したのは羽田健太郎であり、彼はテレビ音楽界において非常に著名な存在です。

カバーや他のメディアへの展開

この楽曲はその後、様々なアーティストによってカバーされることになりました。フランク永井や山本譲二、Plastic Tree など、多くのミュージシャンが歌い継いできました。1999年にはトヨタ・カムリのCMでも使用されるなど、その人気は未だ衰えません。

このように、「もしもピアノが弾けたなら」は、その独自の背景と魅力的なメロディーで、多くの人々に深い感動を与え続けています。

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