やくざ残酷秘録・片腕切断

やくざ残酷秘録・片腕切断

『やくざ残酷秘録・片腕切断』は、1976年10月16日に公開された日本の映画で、モノクロおよびパートカラーのスタイルが特徴的な作品です。R18+という指定を受けた本作は、安藤昇が企画、製作、監督を手がけた異色の暴力団探訪ドキュメントであり、やくざ社会の裏側に初めてカメラを向けたものとして評価されています。

概要

この映画は、モンドフィルムや偽ドキュメンタリーが流行していた時期に制作され、フェイクとリアリティが交錯する内容となっています。安藤昇自身がナレーターとして参加し、視聴者に向けてリアルな暴力団の姿を伝えています。1973年に公開された『仁義なき戦い』以降、実録ヤクザ映画は急増しましたが、本作の公開時にはまだ多くの極道の人々がメディアに対して取材を受けることはなされていませんでした。

しかし、安藤の尽力によってこの映画の制作が実現し、その内容は東映の実録映画の終焉を予感させるものとなりました。安藤は命がけで取材を行い、彼自身の目を通したやくざ社会を生々しく映し出しています。

キャスト

ナレーションは安藤昇が担当し、主な登場人物には平塚八兵衛（警視庁刑事本人）や梵天太郎、さらにはその他の関係者が加わります。安藤の生々しい語りが、視聴者を引き込む要因となり、映画全体の雰囲気を作り出しています。

スタッフ

主要スタッフには、撮影を担当した椎塚彰や選曲の村田好次、録音の太田克己、照明の土田勇、記録の杉本英幸、編集の菅野順吉などがいます。彼らの協力によって、本作はリアルなドキュメンタリーとして完成しました。

企画背景

本作の企画は、当時の東映社長・岡田茂の発言に端を発しています。岡田は、1976年下半期のラインナップにおいて、よりドギツク、リアルな実録ものを制作する方針を打ち出し、その一環として本作が位置づけられました。

撮影秘話

映画の中で特に話題となったのが「指詰めシーン」です。これはフェイクなしで実際に行われ、安藤は暴力団の構成員に金を渡して指を切る者を探し、実際に撮影に成功しました。撮影後、医者を待機させるも、当の人物は「いらない」と言い、手当だけ受けて帰ってしまったというエピソードは、映画の一部として語り継がれています。このような生々しいリアリティこそが、本作の魅力の一つと言えるでしょう。

作品評価

高田宏治は、この映画が劇場で公開されていた事実自体が驚きだと評しています。時代背景を考慮すると、犯罪行為といえる内容が堂々と上映されることは、今日では考えられないことかもしれません。

映像ソフトと興行形式

本作は、東映ビデオからVHSとして発売されましたが、その後絶版となっています。また、珍しい興行形態として、5本の映画を二本立てや三本立てで上映するというスタイルも行われました。

このように『やくざ残酷秘録・片腕切断』は、やくざ社会の現実を独自の視点から描いた名作として、その存在意義を今に伝えています。

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