やさしく愛して

映画『やさしく愛して』について

『やさしく愛して』（Love Me Tender）は、1956年に公開されたアメリカ映画で、ロバート・D・ウェッブが監督を務めました。この作品は、シネマスコープ形式で白黒映像が特徴じる西部劇であり、ミュージカルの要素も取り入れています。主要なキャストには、リチャード・イーガン、デブラ・パジェット、そしてこの映画で銀幕デビューを果たしたエルヴィス・プレスリーが名を連ねています。なお、原題の『Love Me Tender』は、プレスリーの楽曲「ラヴ・ミー・テンダー」に由来しており、この曲はシングルとして初めて百万枚以上の売上を記録しました。

この映画は、エルヴィス・プレスリーにとって重要な作品であり、特にデビュー作品であることから、俳優名の掲載順において唯一、出演者のリストのトップに名前が載っていないという特異性も持っています。また、プレスリーはこの作品において実在の歴史上の人物を演じる機会を得ました。

あらすじ

物語の中心人物はクリント・リノという若者で、彼はリノ四兄弟の末っ子です。南北戦争中、兄たちが南軍として従軍していた際、クリントは農場を母親と共に守っていました。戦争が終結した後、兄たちは帰郷しますが、兄のヴァンスが戦死したとの誤報が伝わっていました。クリントは驚くことに、ヴァンスの許婚者であるキャシーと結婚しています。ヴァンスは広い心でクリントとキャシーの関係を受け入れ、「キャシーは家族であるべきだ」と語りますが、この問題は家族の間に葛藤を生む要因となります。

この映画の根底には、キャシーがクリントを裏切ることなく、同時にヴァンスに対する愛情を抱き続けるという複雑な感情が描かれています。兄弟たちの帰郷後も、キャシーはクリントの側に居ますが、ヴァンスへの未練が残ります。物語の中でクリントは、兄を恋のライバルと見なすようになり、嫉妬心に悩まされることになります。

重要な事件の展開

映画は、南軍の騎兵隊として戦った兄弟たちが北軍の給料を運ぶ列車を襲撃するシーンから始まります。この襲撃時には、戦争がすでに終わっていることを知らずに行動しています。この事件が後に彼らの運命に影響を及ぼすことになります。襲撃に参加した兄弟は、合衆国政府から強盗として追及される運命にあります。特にヴァンスは、戦友たちの意向に対して葛藤し、得た金銭を返還しようとします。

映画の結末は悲劇的であり、クリントとヴァンスの間での激しい撃ち合いが描かれます。皮肉にも、クリントはこの最終的な銃撃戦で命を落としてしまいます。クリントが亡くなった後、彼の兄弟たちは赦免され、クリントの死の責任を取る形で別の元南軍兵士たちが逮捕されることになります。彼の遺体は、家庭農場の一角に埋葬されることになります。

キャスト情報

• - ヴァンス・リノ - リチャード・イーガン
• - キャシー・リノ - デブラ・パジェット
• - クリント・リノ - エルヴィス・プレスリー
• - ミスター・シリンゴ - ロバート・ミドルトン
• - ブレット・リノ - ウィリアム・キャンベル
• - レイ・リノ - ジェームズ・ドルーリー
• - マイク・ギャヴィン - ネヴィル・ブランド
• - マーサ・リノ - ミルドレッド・ダノック
• - エド・ギャルト - ラス・コンウェイ
• - ミスター・ケルソ - ケン・クラーク
• - パーディー・フレミング - L・Q・ジョーンズ
• - 南軍兵士 - ディック・サージェント
• - ミスター・デイヴィス - バリー・コー

本作『やさしく愛して』は、エルヴィス・プレスリーの初出演作としてだけでなく、物語の深みや人間関係の葛藤を描いた映画としても記憶されています。

もう一度検索