やさしく歌って

やさしく歌って - 普遍的な名曲の物語

1971年、ノーマン・ギンベルの作詞とチャールズ・フォックスの作曲によって生まれた「Killing Me Softly with His Song（やさしく歌って）」は、半世紀以上にわたり人々を魅了し続ける名曲です。その誕生から世界的な成功、そして日本の音楽シーンにおける影響まで、この楽曲の軌跡をたどってみましょう。

若き歌手の感性と才能の開花

19歳の若さで音楽界にデビューしたロリ・リーバーマンは、才能あるソングライター、ギンベルとフォックスと出会い、彼らから楽曲提供を受ける契約を結びました。リーバーマンは、当時無名だったドン・マクリーンの楽曲「Empty Chairs」に心を奪われ、そこからインスピレーションを得て「Killing Me Softly With His Blues」という詩を創作しました。この詩を基に、ギンベルとフォックスが楽曲を完成させ、「Killing Me Softly with His Song」が誕生しました。1972年8月にリリースされたオリジナルバージョンは、残念ながら大きな成功には繋がりませんでした。

ロバータ・フラックによる大ヒットと栄光

運命の転機は、ロバータ・フラックとの出会いでした。フラックが飛行機の機内BGMでこの曲を偶然耳にし、その魅力に惹きつけられたのです。彼女が歌ったバージョンは瞬く間に人気を博し、1973年にはビルボードチャートで4週間1位を獲得、さらにその後も1位に返り咲く快挙を成し遂げました。この大ヒットにより、フラックはグラミー賞で最優秀レコード、最優秀楽曲、最優秀女性ボーカルの3部門を受賞する栄誉に輝きました。

多様なカバーと時代を超えた魅力

「やさしく歌って」は、その後も多くのアーティストによってカバーされ続けました。1996年にはフージーズによるヒップホップアレンジバージョンがグラミー賞を受賞、2002年の映画「アバウト・ア・ボーイ」では重要なシーンで使用され、新たな世代にも広く知られることとなりました。

日本では1974年、南沙織、尾崎紀世彦、ペドロ＆カプリシャスなど、多くの歌手が日本語でカバーしました。近年では、平井堅がロバータ・フラック本人とデュエットバージョンを制作するなど、その人気は衰えることを知りません。BMI調べによる「20世紀にアメリカのテレビやラジオで最もオンエアされた100曲」の第11位にランクインしていることからも、この楽曲の普遍的な魅力と、時代を超えた影響力の大きさがわかります。

渡辺美里によるカバーと新たな息吹

日本のアーティストによるカバーの中でも、渡辺美里による2002年のシングル「やさしく歌って〜Killing me softly with his song〜」は特筆に値します。ネスカフェエクセラのCMソングとして起用され、多くのリスナーに新鮮な感動を与えました。カップリング曲には、赤い鳥の代表曲「翼をください」のカバーが収録され、このシングルは渡辺美里の音楽史における重要な一ページを飾っています。

まとめ

「やさしく歌って」は、オリジナルバージョンから始まり、様々なアーティストによる解釈を経て、現代に至るまで世界中で愛され続けている不朽の名曲です。その魅力は、繊細なメロディー、心に響く歌詞、そして時代を超えて共感できる普遍的なテーマにあると言えるでしょう。これからも多くのアーティストやリスナーにインスピレーションを与え続け、音楽史にその名を刻み続けることでしょう。

もう一度検索