やんばる国立公園

沖縄本島北部に位置するやんばる国立公園は、2016年に新たに指定された国立公園です。国頭村、大宜味村、東村の3村（通称「やんばる3村」）とその周辺海域を区域とし、沖縄の自然を代表する亜熱帯照葉樹林が広がる地域を保護しています。この公園の指定は、日本全国で33番目となり、沖縄県内では3番目です。

公園の概要

「やんばる」とは、沖縄本島の北部地域を指し、山々が連なり森が広がる地域を意味します。やんばる国立公園は、沖縄海岸国定公園の一部を編入し、指定当初の面積は17,292ha（陸域13,622ha、海域3,670ha）でした。その後、北部訓練場の返還地の一部が編入され、さらに拡大しています。公園区域内には、以下のような特徴的な地形や場所が含まれています。

山岳

与那覇岳、辺戸岳、尾西岳、伊部岳、伊湯岳、ネクマチヂ岳、塩屋富士、玉辻山など、多様な山々が連なっています。

河川

辺野喜川、与那川、慶佐次川、安波川、新川川、平南川など、豊かな水が流れる河川があります。

島・岬

安田ヶ島、宮城島、辺戸岬など、海岸線に沿って島や岬が点在しています。

その他

福上湖（福地ダム）北側、田港御嶽、塩屋湾、茅打バンタ、金剛石林山など、多様な景観が見られます。

保護規制区域

公園内は、保護の度合いに応じて特別保護地区、第1種～第3種特別地域、普通地域に区分されています。特に、特別保護地区と第1種特別地域は、世界自然遺産「奄美・琉球」の推薦区域に含まれており、その保護の重要性が高まっています。環境省は、これらの地域を厳格に保護するために、規制を強化しています。

- 特別保護地区：3,009 ha
- 第1種特別地域：5,001 ha
- 第2種特別地域：4,413 ha
- 第3種特別地域：3,857 ha
- 普通地域：1,031 ha

事業計画

やんばる国立公園では、自然再生施設を設置し、照葉樹林の再生と成熟を促進する計画が進められています。また、園地、宿舎、野営場、博物展示施設などの利用施設も整備されており、車道や歩道も設けられています。

事務所

公園の管理運営は、環境省の那覇自然環境事務所とやんばる自然保護官事務所（やんばる野生生物保護センター内）が担当しています。やんばる野生生物保護センターでは、希少種の調査研究や保護活動、普及啓発などが行われています。

設立への経緯

やんばるの国立公園化構想は、1996年に当時の環境庁長官が発表したことに始まります。その後、北部訓練場の返還に関する動きや、国立・国定公園の選定要領の改正などを経て、2010年には国立公園の新規指定候補地の一つに選出されました。2016年2月には国立公園化の方針が決定し、同年9月15日に正式に「やんばる国立公園」として指定されました。この指定日は、ヤンバルテナガコガネが発見された日にちなんで決められました。

国立公園の指定に関する取り組み

公園の指定を記念して、地元の企業や団体が様々な取り組みを行っています。キリンビールは、やんばる国立公園応援デザイン缶を発売し、売り上げの一部を密猟パトロール用の制服製作に充てました。オリオンビールも、記念デザイン缶を販売し、売り上げの一部をやんばるの環境保全活動に寄付しています。

今後の課題

やんばる国立公園は、環境保護と地域開発の両立という課題を抱えています。特に、密猟や過剰採取、ノネコやノイヌによる生態系への影響などが懸念されています。また、林業との共存も重要な課題であり、地域住民の生活や産業との調和が求められています。観光客の増加による環境負荷にも配慮が必要であり、人数制限などを設けることも検討されています。

世界遺産登録に向けて

環境省は、やんばる国立公園の指定域の一部を、世界自然遺産「奄美・琉球」として登録することを目指しています。世界遺産登録は、自然環境の保全をより強化する上で重要ですが、そのためには、北部訓練場の存在や地域住民の理解など、様々な課題を解決していく必要があります。IUCNから登録延期の勧告を受けた後、日本政府は推薦を取り下げ、北部訓練場返還地を公園区域に編入するなどして、再度登録を目指しています。

北部訓練場について

やんばる国立公園の隣接地に位置する北部訓練場は、その返還や環境問題が注目されています。返還された区域の一部は公園に編入されましたが、残りの区域の今後の取り扱いが課題となっています。特に、ヘリパッドの建設やオスプレイの配備による環境影響が懸念されており、その影響を評価することが求められています。

参考文献

環境省那覇自然環境事務所が発行した「やんばる国立公園」をはじめ、様々な資料や書籍が参考文献として挙げられます。

外部リンク

環境省のウェブサイトや、やんばる野生生物保護センターのウェブサイトなどで、やんばる国立公園に関する情報が公開されています。

やんばる国立公園は、沖縄の豊かな自然と文化を象徴する貴重な場所です。今後も、環境保護と地域振興の両立を目指し、その価値を未来に伝えていくことが期待されています。

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