密猟

密猟：絶滅の危機を招く違法行為

密猟とは、国際条約や国内法を無視して、野生動物を採取する違法行為です。魚介類の違法採取は密漁と区別されますが、鯨類やアザラシなどの海棲哺乳類は密猟に含まれます。植物の場合は密採と呼ばれますが、薬草やキノコの採取も広義では密猟に含まれる場合があります。

密猟の対象となる動物は様々です。ペットとして取引されるもの、牙などの特定部位のみが目的のもの、食用や漢方薬の材料として利用されるものなど、多様なケースが存在します。いずれの場合も、その土地から動物がいなくなるという結果に繋がります。特に、絶滅危惧種や需要の高い動物は、闇市場で高値で取引されるため、密猟が後を絶ちません。密猟者による殺害事件も発生しており、その深刻さがうかがえます。

絶滅危惧種は個体数が少ないため、わずか1頭の採取でも種の存続に大きな打撃を与えます。人間の乱獲によって動物が絶滅した事例は数多く存在します。密猟は厳しく取り締まるべき重大な犯罪ですが、その対策は十分とは言えません。

特に、アフリカや東南アジアなど、国家財政が厳しい国々に絶滅危惧種が多く生息しています。これらの国では、国民の生活向上策が優先され、動物保護は後回しになりがちです。さらに、官僚の腐敗が深刻な国では、法執行機関が賄賂によって買収されたり、治安当局者が密猟に加担するケースも見られます。

2000年代後半からは、ゾウの大規模な密猟が問題となっています。内戦などによる紛争で入手したAK-47などの武器が密猟に利用されていること、アジア（特に中国やタイ）での象牙需要の拡大などが背景にあります。

一方、密猟取り締まりの過程で、地域住民の狩猟道具や生活用品の没収、住民への虐待が報告されています。狩猟道具の没収によって、地域住民が動物性タンパク質を確保できなくなる懸念もあります。また、密猟取り締まりとゾウによる農業被害の両方の問題を抱えている地域もあります。

自然保護団体による先住民の人権侵害も懸念されています。国際NGO「Survival International」は、世界[[自然保護基金]]による先住民の権利侵害を告発するビデオを公開しています。ビデオの中で、先住民は保護活動家による森の破壊や、自分たちへの差別的な扱いについて訴えています。

日本の事例

日本では、メジロやクマタカなどの密猟が問題となっています。明治時代後期には、アホウドリなどの鳥類密猟を目的とした日本人の北西ハワイ諸島への進出が国際問題に発展しました（バード・ラッシュ）。日本国内では、ニホンオオカミ、ラッコ、ニホンアシカ、ニホンカワウソなどが密猟の対象となり、ニホンカワウソの最後の確認個体も密猟者によって発見されたものです。

1970年代の岐阜県東濃地方では、カスミ網を使ったツグミ、アオバト、ルリビタキなどの密猟が盛んでした。密猟現場には番小屋が設けられ、野鳥料理やビールを提供するところもあったといいます。日本野鳥の会による航空写真調査では、岐阜県内で多数の密猟場が確認されました。

密猟は、生物多様性を脅かし、生態系に深刻な影響を与える重大な犯罪です。国際的な協調と、地域住民を含む関係者間の理解と協力によって、効果的な対策を講じる必要があります。絶滅危惧種の保護、地域住民の生活支援、密猟取り締まりの強化など、多角的なアプローチが不可欠です。

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