ゆずの素

ゆずの素：インディーズ時代を彩る、ゆずの原点

1997年10月25日、セーニャ・アンド・カンパニーよりリリースされた『ゆずの素』は、フォークデュオ・ゆずの記念すべきデビューミニアルバムです。横浜・伊勢佐木町でストリートミュージシャンとして活動していた彼らの、インディーズ時代唯一の作品であり、その後の彼らのキャリアを決定づける重要な作品となりました。

路上ライブの息遣いが聞こえる、唯一無二の音源

このアルバムの最大の特徴は、収録曲の多くが、当時のゆずが活動の拠点としていた屋外で録音されている点です。「てっぺん」「する～」「地下街」「ろくでなし」「岡村ムラムラブギウギ」といった楽曲には、周囲の雑音も収録されており、一般的なスタジオ録音とは異なる、リアルなライブ感と臨場感が溢れています。この臨場感こそが、聴く者に当時の彼らの熱気とエネルギーをダイレクトに伝えてくれるのです。

2010年にはメジャー流通による再リリースが行われましたが、オリコンチャートでは別作品としてカウントされるため、オリジナル盤と再発盤の売上は合算されません。初回購入者特典として、1997年8月31日の路上ライブ音源「夏色の素」が収録されたCDが配布されたことも話題となりました。

各楽曲の魅力と、ライブにおける存在感

アルバム収録曲は、現在でもライブで頻繁に演奏される楽曲が多数収録されており、ゆずのライブの歴史を語る上でも重要な位置を占めています。特に「てっぺん」は、大型ライブや恒例イベント「冬至の日・フリーライブ」のラストを飾る定番曲として知られています。また、「地下街」はミュージックビデオが制作され、『録歌選 金銀』に収録されています。横浜の山下公園やマリンタワー付近で撮影された映像は、当時の彼らの雰囲気を色濃く反映しています。

「連呼」はゆずとして初めてのオリジナル曲であり、「する～」「岡村ムラムラブギウギ」なども、ライブで観客参加型の演出がなされるなど、彼らの代表曲として長く愛されています。一方、「ろくでなし」は比較的ライブでの披露機会が少ない楽曲であり、その希少性もまた魅力となっています。「岡村ムラムラブギウギ」は、ゆずの地元である横浜市磯子区岡村を舞台にしたご当地ソングで、独特なアレンジと振り付けでライブを盛り上げてきました。

さらに、歌詞カードにはゆず二人のヒストリーが綴られており、このミニアルバムが単なる音楽作品を超えた、彼らの軌跡を示す重要な資料となっている点も見逃せません。

影響とその後

『ゆずの素』は、後年、様々な形でその影響力を示しました。2001年、お笑いコンビ「くず」がリリースしたシングル「ムーンライト」のジャケットは、『ゆずの素』のジャケットのパロディであり、岩沢厚治自身もその存在を楽しんでいると語っています。

2017年に行われた「冬至の日ライブFINAL」では、『ゆずの素』収録曲が曲順通りに演奏され、彼らの原点回帰を印象付けるライブとなりました。 また、このアルバムに収録された楽曲は、彼らのベストアルバム『ゆずのね 1997-2007』、『Home 1997-2000』などにも収録され、現在も聴き継がれています。

『ゆずの素』は、路上ミュージシャンからメジャーアーティストへと羽ばたいたゆずの、出発点であり、その後の成功の礎となった、かけがえのない作品と言えるでしょう。

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