りょーゆー

かつて北海道の空知地方や石狩地方で、地域に根ざしたスーパーマーケットチェーンとして親しまれたのが「りょーゆー」です。その運営を手がけていたのは、滝川市に本社を置いていた菱栄商事株式会社でした。しかし、同社は経営不振から2006年に特別清算によって経営破綻に至り、「りょーゆー」の店舗はその歴史に幕を下ろすこととなりました。

設立と展開

「りょーゆー」の歴史は、現在の菱友株式会社の前身である滝川菱雄株式会社が、1970年に食品スーパー事業を開始したことに遡ります。その後、1974年10月に食品スーパー部門が分社化され、菱栄商事株式会社が設立されました。これが「りょーゆー」の本格的な始まりとなります。設立当初の1970年代から1980年代にかけては、本社のある滝川市を中心に、芦別市、富良野市、岩見沢市といった空知地方の各都市に店舗を展開し、基盤を固めていきました。

拡大と多角化

1990年代に入ると、「りょーゆー」は滝川市周辺からさらに広範囲への展開を開始します。北海道のローカルスーパーで構成される共同仕入れ組織であるHGC（北海道グローサリーチェーン、後にHGCグループに改称）に中核スーパーとして参画し、その活動を広げました。1998年からは菱栄商事の社長がHGCの社長を兼務するなど、グループ内での中心的な役割を担います。事業は順調に拡大し、1994年時点での菱栄商事の売上高は124億円に達していました。スーパー事業に加え、菱栄商事は全国的に知られる飲食店チェーン「びっくりドンキー」や、レンタルビデオ店の「TSUTAYA」、洋菓子店の「シャトレーゼ」といった多様なフランチャイズ事業も展開しており、多角的な経営を行っていました。

経営の変化と札幌進出の試み

2000年には、同じHGCグループに属し、2期連続で経常赤字に陥っていた札幌市のスーパー「スーパーエース」を運営する松下株式会社の発行済み株式の7割を取得し、傘下に収めます。これにより、菱栄商事は札幌圏への足がかりを得ようとしました。同年には「りょーゆー」としても札幌市内に東苗穂店を開店させ、札幌進出を果たしますが、わずか1年ほどで撤退を余儀なくされます。この札幌での苦戦を受け、一部札幌に移していた会社機能も滝川へと戻されました。

2004年には当時の社長がHGC社長を退任し、札幌圏での事業展開の難しさを認め、既存店の立て直しに注力する方針を示します。経営状況が厳しくなる中、会社は経営再建を図ります。

再建の試みと倒産

2005年5月1日、菱栄商事は長年活動を共にしてきたHGCグループを脱退し、全国規模のボランタリーチェーンである全日食チェーンに加盟します。この時、菱栄商事は全日食チェーンにとって北海道で最大の加盟企業となりました。経営改善のため、一部店舗の閉鎖を進めるとともに、同年10月には美唄店を津司が運営する「卸売スーパー」のフランチャイズ店舗に転換。さらに、2006年1月には子会社とした松下株式会社を再びHGCに売却するなど、事業の再構築を急ぎました。

しかし、これらの努力も実を結ばず、菱栄商事は2006年8月22日をもって食品スーパー事業からの撤退を決定します。そして、その後の10月6日、札幌地方裁判所に特別清算開始を申請し、倒産しました。負債総額は約17億円前後と報じられています。

店舗のその後

倒産時に営業していた11店舗のうち、再建策の一環として一部店舗は他の事業者に引き継がれることになりました。滝川市内の3店舗（栄町店、西町店、朝日町店）と芦別市の本町店、滝川市の滝の川店の計5店舗はイオングループの株式会社ジョイへ譲渡され、「ジョイ」の屋号で営業を継続しました。また、美唄店と岩見沢市の鉄北店の2店舗は、すでにフランチャイズ転換が進んでいた美唄店を含め、株式会社津司へ譲渡され「卸売スーパー」として再出発しました。

一方、最後まで残っていた店舗のうち、滝川市の扇町店、富良野市の富良野店、岩見沢市の日の出店、江別市の上江別店の4店舗は、そのまま閉店となりました。これらの店舗の中には、富良野店のようにかつてテレビドラマのロケ地となった場所や、上江別店のように跡地の一部が菱栄商事が展開していた別事業（TSUTAYA）の店舗として利用されているケースもありました。

なお、スーパー事業の従業員約120名については、店舗を引き継いだイオングループが雇用を継続しました。また、菱栄商事が手がけていたフランチャイズ事業のうち、「びっくりドンキー」と「TSUTAYA」については、食品事業撤退前の2006年8月末に、菱栄商事の実質的な親会社であった北星株式会社へ譲渡され、2020年現在も一部店舗が北星株式会社によって運営されています。

倒産前に閉店した店舗も複数存在し、江別店（競争激化）、歌志内店（人口減、核テナント撤退）、砂川店（競争激化）、美園店（競争激化）、札幌市の東苗穂店（売上不振による短期撤退）、滝川市の大町店などがありました。これらの店舗の跡地も、他業種の店舗や公共施設などに転用されていきました。

「りょーゆー」は、北海道の地方都市を中心に展開し、一時は札幌進出も試みましたが、激しい競争や経営環境の変化に対応しきれず、その歴史に幕を下ろしました。

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