わかさ (海洋観測艦)

海上自衛隊の海洋観測艦「わかさ」（JS Wakasa, AGS-5104）は、ふたみ型海洋観測艦として建造された2番艦です。艦名は日本の若狭湾に由来しており、その名を受け継ぎました。

本艦は、同型艦の「ふたみ」に続いて建造されましたが、計画年度には7年の隔たりがありました。この期間における技術的な進歩や運用思想の変化を反映し、「ふたみ」に比べて様々な部分で改設計が施されています。海洋観測という任務の性質上、詳しい改設計の内容は多くが非公開とされていますが、公表されている情報としては、主機関の換装や乗組員の定員増加などが挙げられます。これらの変更は、より高度な海洋観測能力や長期にわたる任務遂行能力の向上を目指したものと考えられます。

長期にわたる運用を支えるため、平成27年度（2015年度）の計画において、艦の寿命を延ばすための艦齢延伸工事に予算が付与されました。この改修により、本艦は約10年間の運用延長が実現しました。その結果、「わかさ」は2025年現在、海上自衛隊で活動している艦艇の中で最も古い艦となっています。長年にわたり日本の海洋観測を支えてきた本艦も、その任務を終える時期が近づいており、2026年3月に除籍される予定です。

「わかさ」の建造は、昭和58年度（1983年度）の計画に基づき、日立造船舞鶴工場で行われました。1984年8月21日に起工式が行われ、船体の建造が開始されました。翌1985年5月21日には無事に進水し、艤装工事が進められました。そして1986年2月25日、海上自衛隊に正式に就役しました。就役後は海洋業務群に編入され、日本の重要な港湾の一つである横須賀を母港として活動を開始しました。

その艦歴において、「わかさ」はいくつかの重要な出来事に関わっています。

2008年2月18日に発生した、イージス艦「あたご」と漁船「清徳丸」の衝突事故では、大きな損傷を受けた漁船「清徳丸」（7.3トン）の曳航作業に、敷設艦「むろと」と共に従事しました。
2009年9月18日には、海上自衛隊史上初となる女性艦長として、松尾直子3等海佐（当時）が着任したことで、国内外から大きな注目を集めました。これは、海上自衛隊における女性の活躍の場が広がっていることを示す象徴的な出来事でした。
* 2011年3月11日に発生した東日本大震災では、大規模な災害派遣任務に対応するため、横須賀から緊急出港しました。被災地への支援活動に従事し、同年3月21日午後2時42分には、特に大きな被害を受けた宮城県石巻市の牡鹿総合支所へ救援物資を輸送する重要な役割を果たしました。一連の災害派遣任務を終え、3月28日に横須賀へ帰港しました。

また、2015年12月1日には、海上自衛隊の組織改編が実施されました。これにより、それまで所属していた海洋業務群が海洋業務・対潜支援群へと改編され、「わかさ」は新設された同群隷下の第1海洋観測隊に編入され、引き続き重要な任務にあたりました。

「わかさ」は、約40年近くにわたり海上自衛隊の海洋観測任務を支え、日本の安全保障と科学調査に貢献してきました。様々な改設計や艦齢延伸を経て最前線で活躍し続け、時には災害支援といった人道的な任務にも従事するなど、多岐にわたる役割を果たした歴史ある艦艇です。その退役は、長きにわたる任務の完了を示すものです。

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