わかぶな高原スキー場
新潟県岩船郡関川村にかつて存在した「わかぶな高原スキー場（わかぶなこうげんスキーじょう）」は、1987年に開場し、多くのスキー・スノーボード愛好家に親しまれたが、残念ながら2018-2019シーズンを最後にその歴史に幕を閉じた。
冬季は閉鎖される村営牧場の多角的な活用を目指した関川村の構想に基づき、民間の活力を導入する形で誕生したのが本スキー場である。当時の住友建設グループ会社であったスミコ・リゾートが建設と運営を担い、1987年（昭和62年）に開業した。開業当初から複数のレストランや1,300台を収容可能な広大な駐車場が整備されており、周辺に点在する荒川峡温泉郷との連携を図るため、あえて場内には宿泊施設は設けられなかった。
開場後、順調に利用客を増やし、1996年（平成8年）には年間8万8千人の来場者数を記録してピークを迎えた。しかし、その後はスキー・スノーボード人口全体の減少や、気候変動による少雪の影響など複合的な要因により、利用客は徐々に減少していった。2004年（平成16年）、経営状況の悪化から、当時の運営主体であった三井住友建設の子会社スミコ・リゾートが撤退の意向を示し、スキー場の存続が危ぶまれる事態となった。この危機に対し、地域の村民有志が立ち上がり、株式会社「わかぶな高原」を設立。運営を引き継ぐ形で、一旦はスキー場の灯を守ることができた。
新たな運営体制のもとでも、利用者減少の傾向に歯止めはかからず、経営状況は厳しい状態が続いた。関川村は運営会社に対し、赤字からの脱却に向けた具体的な経営改善計画の提示を求めたが、状況は好転しなかった。2019年（令和元年）5月、関川村議会の臨時会において、村長は運営会社の電気代の一部を肩代わりする補正予算案を提出する一方で、今後の財政支援は停止する方針を表明した。ただし、もし別の企業が運営に関心を示した場合には、前向きに検討する意向も示した。2019-2020シーズンは記録的な雪不足に見舞われ、結局一度も営業を開始できないままシーズンが終了した。2020年（令和2年）1月、関川村は現在の運営会社に対して、施設の運営を安心して任せられないと判断。翌シーズン以降のスキー場施設使用貸借契約を更新しない旨を通告した。運営を継続したい現運営会社は村との交渉を試みたが、具体的な改善策が示されないとして村は8月末に交渉を打ち切り、施設からの立ち退きを指示した。この結果、2020-2021シーズンの営業は事実上不可能となり、休業状態に陥った。
2021年（令和3年）1月、関川村は新潟日報の取材に対し、わかぶな高原スキー場を村が直営する計画はなく、リフト設備などを撤去してスキー場としては完全に閉鎖する方針であることを明らかにした。これにより、2019-2020シーズンに雪不足で営業できなかったまま、スキー場としての役割を終えることとなった。スキー場の敷地は31名の地権者による共有地であり、閉鎖時は村が年間600万円で借り上げていたが、賃借期限である2022年7月までには地権者へ返還される予定であった。跡地利用については、村長は土地は返還するが、レストハウスなど利用価値のある施設は残したい意向を示しており、土地返還後に村と地権者の間で今後の活用について協議を進めたいと語っていた。また、跡地を含む周辺の山林では、東急不動産による大規模な風力発電所の建設計画が進められていることも報じられた。
わかぶな高原スキー場には、クワッドリフト1基とペアリフト3基が設置されていた。山麓にはスキーセンターとレストハウスがあり、それぞれレストランを備えていた。駐車場は合計1200台の収容能力があった。ゲレンデは初心者から上級者まで楽しめる多様なコースが用意されていた。
初心者向け: エンジョイコース、トレーニングコース、わかぶなコース（最長1200m、スノーパーク併設）、トレッキングコース、チビッコ広場。
中級者向け: パノラマコース、スウィートコース、スカイラインコース。
上級者向け: アクティブコース、ハイテックコース（最大斜度34度、非圧雪となることも多い）。
多様なイベントが開催されたことも特徴である。「ICI Cup ジャイアントスラローム大会」は長年にわたりアマチュア向けに開催され、「下越スキー技術選手権」の会場の一つとしても利用された。スノーボードとスキーの混合ジャンプ大会「OH TWO FIVE Air & Jib Session」も開催され、ビッグキッカーなどが設置された。独自のサービスとしては、日曜日にレストハウス内でラジオ放送のようにトークや音楽を流す「SUNDAY DJ」や、スキー場の日常やスノーパークの情報を発信するブログ（最終的には「すべっ太クンBlog」に統合）があった。アクセス面では、高速道路利用者を対象としたリフト券割引「片道持ちますキャンペーン」や、SAJなどの有資格者向けの優待制度も実施されていた。
下越地方の他のスキー場（国設胎内スキー場、ぶどうスキー場、NINOHJI SNOW PARK NINOX、三川温泉スキー場）と連携した「下越共同企画」にも参加していた。この企画では、エリア内のいずれかのスキー場シーズン券保持者に対する他のスキー場での割引や、「下越エリアスキー・スノボ感謝の日」の無料滑走、五つのスキー場の1日券を集めるラリーなどが実施され、地域全体の活性化に貢献しようとしていた。
鉄道: JR羽越本線坂町駅またはJR米坂線越後下関駅から無料送迎バス「シャトル」（シーズン中毎日運行、要予約の場合あり）。期間限定でJR新潟駅南口からも無料送迎バス「ワカブナスーパーシャトル」（土曜限定、要予約）。
* 車: 日本海東北自動車道荒川胎内インターチェンジから国道113号を経由して約30分。
日本のスキー場一覧#新潟県
わかぶな高原スキー場
歴史
冬季は閉鎖される村営牧場の多角的な活用を目指した関川村の構想に基づき、民間の活力を導入する形で誕生したのが本スキー場である。当時の住友建設グループ会社であったスミコ・リゾートが建設と運営を担い、1987年（昭和62年）に開業した。開業当初から複数のレストランや1,300台を収容可能な広大な駐車場が整備されており、周辺に点在する荒川峡温泉郷との連携を図るため、あえて場内には宿泊施設は設けられなかった。
利用者減少と経営の変遷
開場後、順調に利用客を増やし、1996年（平成8年）には年間8万8千人の来場者数を記録してピークを迎えた。しかし、その後はスキー・スノーボード人口全体の減少や、気候変動による少雪の影響など複合的な要因により、利用客は徐々に減少していった。2004年（平成16年）、経営状況の悪化から、当時の運営主体であった三井住友建設の子会社スミコ・リゾートが撤退の意向を示し、スキー場の存続が危ぶまれる事態となった。この危機に対し、地域の村民有志が立ち上がり、株式会社「わかぶな高原」を設立。運営を引き継ぐ形で、一旦はスキー場の灯を守ることができた。
閉鎖への道
新たな運営体制のもとでも、利用者減少の傾向に歯止めはかからず、経営状況は厳しい状態が続いた。関川村は運営会社に対し、赤字からの脱却に向けた具体的な経営改善計画の提示を求めたが、状況は好転しなかった。2019年（令和元年）5月、関川村議会の臨時会において、村長は運営会社の電気代の一部を肩代わりする補正予算案を提出する一方で、今後の財政支援は停止する方針を表明した。ただし、もし別の企業が運営に関心を示した場合には、前向きに検討する意向も示した。2019-2020シーズンは記録的な雪不足に見舞われ、結局一度も営業を開始できないままシーズンが終了した。2020年（令和2年）1月、関川村は現在の運営会社に対して、施設の運営を安心して任せられないと判断。翌シーズン以降のスキー場施設使用貸借契約を更新しない旨を通告した。運営を継続したい現運営会社は村との交渉を試みたが、具体的な改善策が示されないとして村は8月末に交渉を打ち切り、施設からの立ち退きを指示した。この結果、2020-2021シーズンの営業は事実上不可能となり、休業状態に陥った。
スキー場としての終焉
2021年（令和3年）1月、関川村は新潟日報の取材に対し、わかぶな高原スキー場を村が直営する計画はなく、リフト設備などを撤去してスキー場としては完全に閉鎖する方針であることを明らかにした。これにより、2019-2020シーズンに雪不足で営業できなかったまま、スキー場としての役割を終えることとなった。スキー場の敷地は31名の地権者による共有地であり、閉鎖時は村が年間600万円で借り上げていたが、賃借期限である2022年7月までには地権者へ返還される予定であった。跡地利用については、村長は土地は返還するが、レストハウスなど利用価値のある施設は残したい意向を示しており、土地返還後に村と地権者の間で今後の活用について協議を進めたいと語っていた。また、跡地を含む周辺の山林では、東急不動産による大規模な風力発電所の建設計画が進められていることも報じられた。
ゲレンデと施設
わかぶな高原スキー場には、クワッドリフト1基とペアリフト3基が設置されていた。山麓にはスキーセンターとレストハウスがあり、それぞれレストランを備えていた。駐車場は合計1200台の収容能力があった。ゲレンデは初心者から上級者まで楽しめる多様なコースが用意されていた。
初心者向け: エンジョイコース、トレーニングコース、わかぶなコース（最長1200m、スノーパーク併設）、トレッキングコース、チビッコ広場。
中級者向け: パノラマコース、スウィートコース、スカイラインコース。
上級者向け: アクティブコース、ハイテックコース（最大斜度34度、非圧雪となることも多い）。
イベントとサービス
多様なイベントが開催されたことも特徴である。「ICI Cup ジャイアントスラローム大会」は長年にわたりアマチュア向けに開催され、「下越スキー技術選手権」の会場の一つとしても利用された。スノーボードとスキーの混合ジャンプ大会「OH TWO FIVE Air & Jib Session」も開催され、ビッグキッカーなどが設置された。独自のサービスとしては、日曜日にレストハウス内でラジオ放送のようにトークや音楽を流す「SUNDAY DJ」や、スキー場の日常やスノーパークの情報を発信するブログ（最終的には「すべっ太クンBlog」に統合）があった。アクセス面では、高速道路利用者を対象としたリフト券割引「片道持ちますキャンペーン」や、SAJなどの有資格者向けの優待制度も実施されていた。
地域連携
下越地方の他のスキー場（国設胎内スキー場、ぶどうスキー場、NINOHJI SNOW PARK NINOX、三川温泉スキー場）と連携した「下越共同企画」にも参加していた。この企画では、エリア内のいずれかのスキー場シーズン券保持者に対する他のスキー場での割引や、「下越エリアスキー・スノボ感謝の日」の無料滑走、五つのスキー場の1日券を集めるラリーなどが実施され、地域全体の活性化に貢献しようとしていた。
アクセス
鉄道: JR羽越本線坂町駅またはJR米坂線越後下関駅から無料送迎バス「シャトル」（シーズン中毎日運行、要予約の場合あり）。期間限定でJR新潟駅南口からも無料送迎バス「ワカブナスーパーシャトル」（土曜限定、要予約）。
* 車: 日本海東北自動車道荒川胎内インターチェンジから国道113号を経由して約30分。
関連項目
日本のスキー場一覧#新潟県
外部リンク
わかぶな高原スキー場
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