わらわし隊

わらわし隊について

わらわし隊とは、吉本興業が朝日新聞社と協力して結成された慰問団であり、日中戦争の最中に中国大陸に派遣され、戦場で戦う兵士たちに笑いや元気を届けることを目的としていました。この慰問団の名称は、当時の帝国陸軍及び海軍の部隊名「荒鷲隊」をもじったもので、結団当初から広く知られる存在となりました。

結団の経過

1938年1月13日、初回のわらわし隊は東京で出発式を行い、皇居への拝礼、明治神宮および靖国神社への参拝を経て、日比谷公会堂で結団式を開催しました。団長である柳家金語楼が挨拶を行い、各芸人が自身の持ちネタを披露しました。その日の夜、兵士たちと共に出発し、1月14日には大阪に到着、陸軍司令部などを訪問し、盛大な壮行会が行われました。

1月17日には北支那班が大連に入港し、中支那班は上海に足を運びました。多くの芸人たちが参加し、「兵隊落語」や歌謡曲などで兵士たちの気を晴らしました。特にミスワカナは、大変な人気を誇り、何度もサイン攻めにされるほどでした。

戦場での慰問活動

わらわし隊の芸人たちは、過酷な状況の中でも、兵士たちを笑わせる活動を続けました。彼らは野天の舞台でパフォーマンスを行い、兵士たちの感情に寄り添いながら、時には涙ながらに希望を与えました。金語楼は自身の舞台挨拶で兵士たちの健康と奮闘を祈り、彼らは「君たちも元気でいてくれ！」と声をかけました。すべてが戦争という厳しい環境の中での出来事でした。

数々のエピソード

慰問活動の中で、面白くも感動的なエピソードが数多く存在します。ある日、歌の仲間たちが毎日新聞の歌を合唱した際、朝日新聞社が注意する場面がありましたが、彼らはその逆境を逆手に取って、さらにボリュームを上げて歌い続けるという反抗的な場面も。このようなアクティブな姿勢からも、彼らの士気の高さが伺えます。

わらわし隊には兵士や将校も参加しており、松井陸軍大将といった幹部までが笑いの渦に巻き込まれました。その中には涙を流しながら笑った将校もおり、周囲の気持ちを形にする素晴らしい瞬間が生まれました。

帰国とその後

約1ヶ月間の慰問活動を終え、北支班は上海丸で長崎に、そして中支班は興安丸で下関に帰国しました。その後、各地での「帰還報告会」が行われ、さまざまな場所で戦場の体験をもとにした新作ネタを披露し、大きな反響を呼びました。吉本興業もこの活動の成功を受けて、第2回とその後のわらわし隊の結成へとつながりました。

まとめ

わらわし隊は、単なる慰問活動に留まらず、彼らが持ち帰った笑いや感動の軌跡を通じて、多くの人々に影響を与えました。この演芸派遣団は、その後も演芸の世界において重要な意味を持ち続け、戦争の中での芸人たちの奮闘は、今もなお語り継がれています。

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