興安丸

興安丸（こうあんまる）

興安丸は、鉄道省によって関釜連絡船用に建造された鉄道連絡船です。この船は金剛丸型の第2船として、1937年に就航を開始しました。その役割は多岐にわたり、関釜連絡船としての需要や戦争の影響を受け、引き揚げ船、さらにイスラム教巡礼船としても活躍しました。その船名は、中国北東部に連なる大興安嶺山脈に由来しています。

船歴

関釜連絡船としての背景

関釜連絡船の歴史は、山陽鉄道が設立した1903年にまで遡ります。1904年の鉄道国有化以降、鉄道院に引き継がれ、日本の大陸進出が進む中、乗客と貨物の需要が急増しました。特に1932年に「満州国」が建国されると、その輸送力の強化が求められるようになりました。

この状況を受け、1937年に興安丸が金剛丸に次ぐ姉妹船として建造されました。興安丸は、石炭焚きの蒸気タービンを用いた推進動力と交流電源システムを備えており、外観や内装のデザインは金剛丸と似ていましたが、日本と中国の伝統様式を取り入れたものでした。ロビーには南満州鉄道から寄贈された興安嶺の油絵が飾られており、その優雅な雰囲気が印象的です。

就航と運用の歴史

興安丸は1937年1月31日に初航海を迎えました。就航後、関釜間の旅客数は急増し、日本軍や満蒙開拓団などさまざまな乗客が利用しました。そのため更なる船の建造も求められましたが、第二次世界大戦の影響で建設が遅延しました。この間、興安丸の定員は増加し、最終的に2,023名に達することとなりました。

1943年には、アメリカ軍の潜水艦による攻撃があり、一時は関釜連絡船の運航状況が不安定になりました。1945年には連合国軍による機雷戦の影響を受けて触雷したものの、興安丸は他の船とともに無事に戦争を乗り越えました。これにより、興安丸は新たな任務を担うことになりました。

引き揚げ船としての活躍

戦後、興安丸はGHQの管理下に置かれ、SCAJAP-K086の管理番号を付与されました。1945年9月から1947年4月にかけては、仙崎・博多と釜山との間で運航し、海外にいた日本人の引き揚げや朝鮮人の帰国輸送を行いました。この船が引き揚げ者を乗せて上陸した仙崎漁港には、記念碑も設置され、興安丸の活動が讃えられています。

その後、興安丸は日本国有鉄道に移籍し、1949年には韓国との輸送業務にも従事しました。さらに、朝鮮戦争時にはアメリカ軍に傭船され、国連軍の物資輸送に使われました。戦争が終結した後も、興安丸は多くの運航をこなし、日本赤十字社の救護班を乗せて活動していました。

船の終焉

引き揚げ業務の後、興安丸は一時海上自衛隊による改装計画があったものの実現せず、最終的には1957年に東洋郵船に売却されました。その後、東京湾の遊覧船やイスラム教巡礼船としても利用されましたが、1970年に解体のために売却され、広島県でその生涯を終えました。

興安丸には多くの保存運動がありましたが、実現は叶いませんでした。しかし、船の一部は記念として各地に保存されています。今なお、その航跡は多くの人々の記憶に刻まれています。

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