わんぱく王子の大蛇退治

出典: 『わんぱく王子の大蛇退治』

『わんぱく王子の大蛇退治』（わんぱくおうじのおろちたいじ）は、日本のアニメ映画として1963年に公開された本作で、東映動画が製作を担当しました。全長86分のこの劇場用アニメは、特に子供向けに制作されたファンタジー作品であり、日本神話を基にしています。映画が公開されたのは1963年3月24日で、全国的には7月15日だったため、夏休みの観客にも多く楽しんでもらえました。キャッチコピーは「八頭の大蛇と空中戦！がんばれ！わんぱく坊やと動物隊!!」です。

制作背景と技術的特徴

本作は、東映動画の長編アニメーション作品の中で第6作にあたります。物語の根幹には日本神話の天岩戸説話や、素盞嗚尊（スサノオノミコト）が八岐大蛇を退治するエピソードが据えられています。本作の製作には7000万円、スタッフは180人、作画に使われた枚数はなんと25万枚に及び、1トンの絵具が使用されました。これまでの作品を監督していた藪下泰司に代わって、新たに監督に就任したのは新人の芹川有吾です。彼はアニメーター出身ではなく、従来の演出家とは異なるスタイルを持ち込み、東映動画に新たな演出の枠組みを確立しました。

特に注目すべきは、日本特有の作画監督制度が初めて導入された点です。この制度により、作品の絵柄を一貫して保つことができ、視覚的な統一感が高まりました。美術監督の小山礼司が提案したグラフィカルなデザインも新しい試みとして評価されています。また、作画の際にはライブアクションが参考にされ、特に岩戸神楽やアクションシーンにおいて効果的に活用されました。

ストーリー概要

物語は、王子スサノオが、両親のイザナギとイザナミのもとでオノゴロ島で日々を楽しんでいるところから始まります。しかし、母のイザナミが突然亡くなり、幼きスサノオはその悲しみの意味を理解できずにいました。嘆きの中、彼は夢の中で母から勾玉を与えられ、勇気を得て、母に会うために黄泉の国へ向かうことを決定します。

スサノオは、大海原で怪魚アクルを退治し、海の神ワダツミに感謝され、兄ツクヨミの国へと導かれますが、黄泉の国への道は教えてもらえず、さらに火の国を目指します。ここでスサノオは火の神と戦い、彼の持つ「氷の玉」の力を借りて勝利します。その後、高天原に行くが、姉アマテラスの助言に従って働くことで数々の失敗を繰り返し、彼女が岩戸に隠れてしまいます。

アマテラスが隠れたため、世界は暗闇に包まれ、高天原の人々は彼女を岩戸から引き出す方法を考え出し、成功を収めます。その後、スサノオは出雲の国へ派遣され、そこでは母の面影を持つ少女・クシナダ姫がクリーチャー・八叉の大蛇の生け贄になる運命に直面していました。

スサノオは彼女を救うために立ち上がり、八頭の大蛇に立ち向かいます。果敢な戦いの中で、母からもらった勾玉が剣に変わり、最後の戦いでヤマタノオロチを討つことに成功します。スサノオの活躍により、村は平和になり、彼はそこで新たな人生を歩むことを決心します。

影響と評価

本作は、特に日本のアニメーション史において重要な作品と見なされています。監督の芹川有吾は、本作製作中に伊福部昭の音楽に感銘を受け、それ以降の作品でもその要素を取り入れることとなりました。また、映画はさまざまな賞を受賞し、その中にはヴェネツィア国際映画祭の青銅大賞も含まれています。アニメーション界の草創期において、本作品が果たした役割は現代のアニメ作品にも脈々と受け継がれています。

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