アイ (第13王朝のファラオ)

メルネフェルラー・アイの治世

メルネフェルラー・アイ（Merneferre Ay）は、紀元前1700年頃から紀元前1677年頃にかけて、古代エジプトの第13王朝において第27代または32代のファラオとして君臨しました。彼の名前はトリノ王名表の第7欄3行目に記載されており、その治世は23年8か月18日にも及ぶと言われています。この期間は、第13王朝における最長の治世とされています。

彼の前の王、イアイブとの関係は明確ではありませんが、アイの後継者であるイニ1世は彼の息子であると考えられています。アイは治世中にピラミッドを完成させたとされ、彼の名前が刻まれたピラミディオンが出土しています。このことから、彼の統治時代において、ピラミッドはメンフィスのどこかに存在していた可能性が高いという見方が強まっています。

アイはまた、上下エジプトにその名を刻んだ記念建造物を残した最後の王でもあり、これが彼が二つの地域を支配していた証拠とされています。しかし、面白いことに、彼の治世の前からデルタ地方の東部はすでに第14王朝と呼ばれる新たな勢力によって独立し、第13王朝政府からの王権主張が行われていました。これは、アイの治世が少なくとも一部では不安定であったことを示唆しています。

彼が即位してからの長い治世にもかかわらず、残されている記録は多くはなく、後の研究からは、王国が末期的な状態にあったことが匂わせられます。また、彼の治世中またはその直後に、古代エジプトの王都であったイチ・タウイが放棄されたと考えられています。このことから、一部の研究者は、メルネフェルラー・アイを中王国時代最後のファラオと見なしています。

興味深いことに、アイ王以降の王たちに関する遺物はすべて上エジプトでのみ発見されており、最終的には王の名前すら確認できないほどに断片的なものになっています。このため、第13王朝がいつ頃に終焉を迎えたのかを特定するのは難しくなっており、古代エジプトにおける歴史の流れを知る上での重要な謎の一つとなっています。彼の治世には多くの謎が存在し続けているため、学者たちの研究は今後も続けられることでしょう。

参考文献

• - ピーター・クレイトン『古代エジプトファラオ歴代誌』吉村作治監修、藤沢邦子訳、創元社、1999年4月。
• - エイダン・ドドソン、ディアン・ヒルトン『全系図付エジプト歴代王朝史』池田裕訳、東洋書林、2012年5月。
• - “第13王朝(紀元前1,773〜1,650年頃)”. 古代エジプト史料館.

もう一度検索