上エジプト

上エジプトの歴史と現在

上エジプト（かみエジプト）は、エジプトにおける地理的な区分であり、主にカイロの南側からアスワンまでの地域を指します。この地域は古代エジプト文明の重要な一部であり、下エジプト（ナイルデルタ）と共に、古代エジプトの二大地域を形成していました。特に古代の上エジプトは、多くの王朝が栄え、政治的に非常に重要な役割を果たしました。

古代エジプトの形成

紀元前3500年ごろ、古代エジプトの主な王朝が上エジプトと下エジプトに分かれて成立しました。そして、紀元前3150年頃、上エジプトのナルメル王が下エジプトを征服し、エジプト第1王朝を樹立しました。この際、上エジプトの中心都市ヒエラコンポリスは、地域の宗教や文化の中心になりました。ヒエラコンポリスを守護する神ネクベトは、やがて上エジプト全体の守護神となり、その象徴として白色の王冠と睡蓮（ロータス）が選ばれました。

王朝の興亡と統一

エジプト第1中間期には、上エジプトは複数の勢力に分かれていました。しかし、テーベが台頭し、ヒエラコンポリスやティニスを制圧することで上エジプトを再統一しました。この背景には、テーベの神アメンが全国的な信仰を集めるようになる過程がありました。その後、エジプト中王国時代を迎えると、テーベを基盤とする第11王朝が下エジプトに進出し、広範囲に統治しました。

第2中間期と新王国の到来

エジプト第2中間期には、下エジプトのアヴァリスを都とするヒクソスの第15王朝と、テーベの第17王朝が対立しました。最終的に第17王朝が勝利を収め、新王国時代が始まりました。この時代には、エジプトの外部勢力との接触が増え、内政の変化も多く見られました。

現代の上エジプト

現在、上エジプトはカイロ周辺やナイルデルタの豊かな農地とは対照的に、主に農村地域で構成されています。そのため、都市化の進展が遅れ、独特な文化が根付いています。住民の多くは、アラブによる征服以前のエジプト民族に由来するフェラヒンと呼ばれる農民であり、彼らは伝統的な農業を営んでいます。

上エジプト地域では、コプト教徒（キリスト教徒）の割合が高く、地域社会の中で独自の文化と信仰が保たれています。このように、上エジプトはエジプトの他の地域と比べて、歴史的背景や社会構造の違いが強く残る場所となっています。古代から続くこの地域の文化は、現代エジプトにおいても魅力的な側面を持っており、観光や研究対象として注目されています。

もう一度検索