アイアン:マン

アントニー・ゴームリー作「アイアン：マン」の詳細

概要

「アイアン：マン」(Iron:Man)は、イギリスのバーミンガムにあるビクトリア広場にかつて存在した、彫刻家アントニー・ゴームリーによる立像です。この像は、地面に埋まっている部分を含めて高さ6メートル、重さ6トンにも及び、その巨大な存在感は広場のランドマークとなっていました。特筆すべきはその傾斜で、背面側に7.5度、左側に5度傾いて設置されていました。

ゴームリー自身は、この作品がバーミンガムやブラックカントリー地方が産業革命期に培った技術へのオマージュであると語っています。鉄を素材に用いることで、産業の歴史を象徴的に表現しようとしたのです。

制作と設置

この立像は、ウィレンホールのブラッドリー・アンド・フォスターズ・キャスティングス（後のFirth Rixson Castings）で鋳造されました。1993年3月、当時ビクトリア広場に面していた郵便局の本局跡に本店を構えていたトラスティーズ貯蓄銀行（後のロイズ銀行の前身の一つ）から、バーミンガム市への寄贈品として広場に設置されました。

当初、この作品は「無題(Untitled)」とされていましたが、設置後まもなく「アイアン・マン(Iron Man)」という通称で呼ばれるようになり、ゴームリー自身が「アイアン：マン(Iron:Man)」を正式名称としました。

物議を醸した設置当初

設置当初、この像は多くの議論を呼びました。特に、最初から錆びている外観に対する批判が多く寄せられました。しかし、これはゴームリーが意図的に酸化させた鉄を使用したものであり、本体を保護するための措置であったことが後に説明され、批判は収束しました。

また、1994年にダイアナ妃がビクトリア広場の再オープンを公式訪問した際、この像が見えないように隠されていたという噂も流れました。これは像に対する様々な意見があったことを物語っています。

寄贈元の銀行がブリストルに本店を移転した際には、この像の移設や撤去を求める声も上がりましたが、像はそのまま広場に残り続けました。このことは、市民の間で「アイアン：マン」が単なる彫刻作品を超えた、地域の象徴として受け入れられていたことを示しています。

立像のひな型

この立像のひな型は、ジュエリー・クォーターにある公共芸術委嘱局(Public Art Commissions Agency)に保管されています。これは、作品の歴史的価値を後世に伝えるための重要な取り組みと言えるでしょう。

撤去とその後

2017年9月5日、ウェスト・ミッドランズ・メトロのセンテナリー広場への延伸工事のため、この立像は一時的に撤去され、倉庫へと移されました。この撤去は、多くの市民にとって別れを惜しむ出来事となりました。

「アイアン：マン」が残したもの

「アイアン：マン」は、その巨大な存在感だけでなく、議論を巻き起こす力も持ち合わせていました。その存在は、バーミンガムの人々にとって単なる彫刻作品以上の意味を持ち、地域の歴史と文化を象徴する存在として、その記憶は今もなお色褪せることはありません。

作品の撤去後、再設置を望む声も多く、その動向に注目が集まっています。

まとめ

アントニー・ゴームリー作「アイアン：マン」は、バーミンガムの歴史と文化を象徴する重要な彫刻作品でした。その設置から撤去まで、様々な議論を巻き起こし、多くの人々の記憶に残る存在です。この作品を通じて、私たちは芸術作品が持つ力、そして地域社会との関わりについて深く考えることができるでしょう。

参考資料

アントニー・ゴームリー公式サイト
BBCニュース: バーミンガムの「アイアン：マン」像の撤去

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