アントニー・ゴームリー

アントニー・マーク・デヴィッド・ゴームリーは、1950年8月30日にロンドンで生まれたイギリスの彫刻家です。彼の作品は、公共空間に設置された大規模な彫刻や、人体をテーマにしたインスタレーションで知られています。特に有名な作品としては、イングランド北部のゲイツヘッドにある『エンジェル・オブ・ザ・ノース（北の天使）』や、リヴァプール近郊のクロスビー・ビーチに設置された『アナザー・プレイス』などが挙げられます。

ゴームリーは、ケンブリッジ大学で考古学、人類学、美術史を学んだ後、スリランカで仏教を3年間学びました。その後、ロンドンの美術大学で彫刻を学び、1970年代後半にはスレイド美術大学の大学院課程を修了しました。彼の初期の作品は、自身の身体を型取りしたものが多く、そこから人体を記憶や変化の「場所」と捉える独自の研究を深めていきました。

1990年代以降、ゴームリーは大規模なインスタレーション作品を制作するようになります。これらの作品では、集団の肉体や、自己と他者の関係性といったテーマが探求されています。『アロットメント』、『クリスタル・マス』、『ドメイン・フィールド』、『インサイド・オーストラリア』、『ブラインド・ライト』などが代表的な作品です。これらの作品を通じて、ゴームリーは私たち全員が生きている状況の反対側で、その場所を具体化する試みだと述べています。彼は自身の身体を、作品のモデル、ツール、そして素材として扱い、そのプロセスは、全人類共通の条件を明らかにするための、個々の肉体の「場所」を捉える行為であると語っています。

ゴームリーの作品は、世界各地の美術館やギャラリーで展示されており、その展示歴は非常に広範囲にわたります。ホワイトチャペル・ギャラリー、テート・ギャラリー、ヘイワード・ギャラリー、大英博物館といったイギリス国内の主要な美術館だけでなく、コペンハーゲンのルイジアナ近代美術館、ワシントンD.C.のコーコラン・ギャラリー、ダブリンのアイルランド近代美術館、ドイツのケルン芸術協会など、世界各国の美術館で個展が開催されてきました。また、ヴェネツィア・ビエンナーレやカッセルのドクメンタなどの国際的な展覧会にも多数出品しており、その作品は世界的に高い評価を得ています。

代表作の一つである『フィールド』は、アメリカ、ヨーロッパ、アジアを巡回し、特に2006年のシドニー・ビエンナーレで発表された『アジアン・フィールド』は、100トンの赤粘土から350人の中国の村民によって手作りされた18万個の小さな粘土像で構成されたインスタレーション作品です。また、ゴームリーは映画とのコラボレーションも行っており、ペニー・ウールコック監督の映画『Exodus (Margate Exodus)』では、高さ25メートルの巨大な彫刻を燃やすという衝撃的なシーンを演出しました。

『エンジェル・オブ・ザ・ノース』とグリニッジのテムズ川沿いにある『クアンタム・クラウド』は、イギリスの現代彫刻を代表する作品として広く知られています。また、『アナザー・プレイス』は、マージーサイド州クロスビー・ビーチに恒久的に展示されており、多くの人々に親しまれています。

ゴームリーは、1994年にターナー賞、1999年にサウス・バンク賞ビジュアル・アート部門、2007年にバーンハード・ヘイリガー賞彫刻部門を受賞し、1997年には大英帝国勲章（OBE）を授与されました。さらに、王立英国建築家協会、ケンブリッジ大学トリニティ・カレッジ、同大学ジーザス・カレッジの名誉フェローであり、2003年からはロイヤル・アカデミー・オブ・アーツの会員でもあります。彼はまた、大英博物館とバルティック現代美術センターの理事も務めています。

主要な作品としては、『フィールド』、『サウンドII』、『アイアン:マン』、『アナザー・プレイス』、『クアンタム・クラウド』、『エンジェル・オブ・ザ・ノース』、『タイム・ホライゾン』、『インサイダー』、『イヴェント・ホライゾン』、『不動山』などが挙げられます。これらの作品は、ゴームリーの彫刻に対する深い考察と、人間存在への関心を反映しており、現代彫刻の重要な一部を形成しています。

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