アイオリス

アイオリス：古代ギリシアの地

アイオリス（またはアイオリア）は、小アジア（現在のトルコ）の北西部に位置した古代の地域です。この地は、古代ギリシア人の一派であるアイオリス人が居住し、都市国家群を築いたことで知られています。

地理

アイオリスは、エーゲ海沿岸に広がる地域で、北はヘレスポントス海峡（現在のダーダネルス海峡）の入口から、南はヘルムス川（現在のゲディズ川）にかけての海岸線に沿っていました。沖合にはレスボス島などの島々も含まれていました。北はミュシア、南はイオニア、東はリディアと隣接しており、地理的にも重要な位置にありました。

アイオリスという地名は、紀元前1000年以前にギリシアから移住してきたアイオリス人に由来します。しかし、アイオリスは単なる地理的な区分ではなく、民族的・言語的なまとまりを示す地域として認識されることが多く、ミュシアの一部（南部）とみなされることもありました。

歴史

歴史家ヘロドトスによると、紀元前8世紀には、アイオリス人の12の都市国家が連合（ドデカポリス）を形成していました。これらの都市は以下の通りです。

キュメ（別名プリコニス）
レリサイ（またはラリッサ）
ネオン・テイコス
テムノス
キラ
ノティオン
アイギロエッサ
ピタネ
アイガイアイ
ミュリナ
グリュネイア
スミルナ（現在のイズミル）

これらの都市の中で最も有名なのはスミルナでしたが、紀元前699年にイオニア同盟に加わりました。残りの都市は、リディア王クロイソスによって紀元前6世紀に征服されました。

その後、アイオリスはペルシア、マケドニア王国、セレウコス朝、ペルガモン王国といった様々な勢力の支配を受けました。紀元前133年には、ペルガモン王アッタロス3世がアイオリスをローマに遺贈し、ローマのアシア属州の一部となりました。ローマ帝国が分裂すると、アイオリスは東ローマ帝国（ビザンツ帝国）の領土となり、15世紀初頭にはオスマン帝国の支配下に入りました。

アイオリス地方の著名な人物

アイオリス地方は、以下のような著名な人物を輩出しています。

ピタネのアウトリュコス：数学者、天文学者
アンドリスコス：マケドニアの僭称者
Elias Venezis：ギリシャの作家

伝承

ホメロスの叙事詩『オデュッセイア』では、主人公オデュッセウスがキュクロープスの国から脱出した後、風の神アイオロスの島に漂着し、西風ゼピュロスの入った袋を授かる場面が登場します。この神話は、アイオリスという地名が風の神アイオロスと関連付けられていることを示唆しています。

まとめ

アイオリスは、古代ギリシア世界において重要な地域の一つであり、その歴史は様々な文化と勢力の交錯によって彩られています。アイオリス人の都市国家群は繁栄し、その文化は後の時代にも大きな影響を与えました。この地域は、地理的、歴史的、そして神話的な観点から、深く探求する価値のある場所です。

参考文献

Pierluigi Bonanno, Aiolis. Storia e archeologia di una regione dell’Asia Minore alla fine del II millennio a.C., USA, 2006

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