アイク・アイザックス

アイク・アイザックス

アイク・アイザックス（Ike Isaacs）は、1923年3月28日にアメリカ合衆国オハイオ州クリーブランドで生まれたジャズ・ベーシストです。1981年2月27日にその生涯を終えるまで、彼は多くの著名なミュージシャンたちのサウンドを、その安定したベース演奏で支え続けました。

子供の頃、アイザックスは最初にトランペットやチューバといった楽器に触れていました。その後ベースに転向し、ベーシストとしてウェンデル・マーシャルの指導を受けています。彼の音楽家としてのキャリアは、第二次世界大戦中に軍隊のバンドで演奏した経験から本格的に始まりました。

戦後、プロのジャズ・ベーシストとしての活動をスタートさせたアイザックスは、1950年代半ばから頭角を現します。1956年にはトロンボーン奏者のベニー・グリーンとの共演を果たし、同年に地元オハイオ州で自身のバンドを率いて活動した時期もありました。その直後、彼は女性ヴォーカリスト、カーメン・マクレエのトリオにベーシストとして加わり、約2年間にわたり彼女のパフォーマンスをバックアップしました。この時期の経験は、彼のキャリアにおいて重要なステップとなりました。

カーメン・マクレエとの活動を経て、アイザックスは人気ヴォーカルグループ、ランバート、ヘンドリックス＆ロスのメンバーとして演奏に参加します。その後も、ジャズ界の巨匠たちとの共演が続きました。特に、1962年にはジャズオーケストラの代名詞ともいえるカウント・ベイシー楽団に参加し、その強固なリズムセクションを支えました。さらに、1966年から1970年にかけての約4年間は、稀代のピアニスト、エロル・ガーナーと密接に活動しました。ガーナーの独特な奏法を支えるアイザックスのベースは、彼の演奏の信頼性を物語っています。

多忙なサイドマンとして活躍したアイザックスですが、リーダーとして録音されたアルバムは非常に少ないことで知られています。確認されている限り、唯一のリーダーアルバムは1967年にRGBレコードからリリースされた『アット・ザ・パイドパイパー』です。このセッションには、ピアニストのジャック・ウィルソンとドラマーのジミー・スミスが参加しており、アイザックスのリーダーとしての演奏を聴くことができる貴重な記録となっています。

アイザックスは、そのキャリアを通じて非常に多くのミュージシャンのアルバムに参加しました。カウント・ベイシー、ランバート、ヘンドリックス＆ロス、カーメン・マクレエといった主要な共演者に加え、ロイ・ブラウン、レイ・ブライアント、ハリー・エディソン、エディ・ロックジョウ・デイヴィス、エラ・フィッツジェラルド、ビリー・ホリデイ、エロル・ガーナー、ベニー・グリーン、アル・グレイ、ジョン・ヘンドリックス、ビッグ・ミラー、エスター・フィリップス、ジャック・ウィルソン、ジョー・ウィリアムスなど、そのリストは多岐にわたります。これらの参加作品の多様性は、彼がいかに多くのジャンルやスタイルのミュージシャンから必要とされていたかを示しています。

アイク・アイザックスは、派手さよりも堅実さ、安定感を重視するジャズ・ベーシストでした。彼は多くの偉大なリーダーたちの音楽を足元から支え、その確かな技術と安定したリズム感で、数多くの名盤に貢献しました。彼の名はしばしばサイドマンとしてクレジットされますが、その存在はアメリカのジャズ史において、不可欠なリズムの要であったと言えるでしょう。

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