アイク・クォーティ

アイク・クォーティ（Ike Quartey）は、1969年11月27日、西アフリカのガーナで生を受けたプロボクサーです。元WBA世界ウェルター級王者として、1990年代に世界のボクシングシーンでその名を轟かせました。

ファイトスタイル

クォーティのボクシングスタイルは、一見すると極めて簡潔なものでした。彼は継続的にジャブを繰り出し、そこから右ストレートや左フックへと繋げて好機を窺う戦い方を得意としました。しかし、その一撃一撃は、並の世界ランカーでさえ受けきれないほどの威力を持つと同時に、相手の攻撃をほぼ完全に遮断する堅牢なガードもまた彼の特徴でした。この洗練された戦闘スタイルを支えたのが、彼の最大の武器である強靭な筋力です。ボクシングの正統派とも言えるクラシカルなスタイルで、多くのファンを魅了しました。

世界王座獲得と防衛ロード

クォーティのキャリアを決定づけた一戦は、初の世界挑戦でした。当時30戦無敗のWBA世界ウェルター級王者クリスピノ・エスパーニャに対し、クォーティ自身も25戦無敗の挑戦者として挑むという、無敗同士の注目の対決が実現します。この一戦で、クォーティは11回に劇的なノックアウト勝利を収め、見事に王座を獲得しました。強敵エスパーニャを打ち破ったことで、彼の名は世界に知れ渡り、その後も圧倒的な強さで防衛を重ねることになります。

防衛戦の中でも特筆すべきは、1995年3月4日に行われた朴政吾（パク・ジョンオ）戦です。OPBF東洋太平洋ウェルター級王者として吉野弘幸を一方的な内容で下していた朴に対し、クォーティはそのジャブだけで相手を流血させるほど圧倒し、4回TKO勝利を収めました。この試合は、クォーティのジャブの威力を示す象徴的な一戦として語り継がれています。

キャリアの転機

7度目の防衛戦となった1997年10月17日のホセ・ルイス・ロペス（メキシコ）戦では、クォーティは本来の輝きが見られず苦戦を強いられます。2度のダウンを喫しながらも、なんとか引き分けに持ち込み、かろうじて防衛に成功しました。この試合後、WBAからはロペスとの再戦指令が出されましたが、クォーティはWBC世界ウェルター級王者オスカー・デ・ラ・ホーヤとのビッグマッチを優先します。この試合は巨額のファイトマネーが約束されていたものの、WBAの指令に従わなかったことで、クォーティは1998年8月にWBA世界ウェルター級王座を剥奪されてしまいます。

デ・ラ・ホーヤとの激闘

王座剥奪後、クォーティはデ・ラ・ホーヤが持つWBC世界ウェルター級王座への挑戦者としてリングに上がり、待望のビッグマッチが実現しました。当初は1998年秋頃に実現する予定でしたが、デ・ラ・ホーヤの予期せぬ負傷によって試合は延期。この結果、クォーティは1年以上のブランクを経てこの一戦に臨むことになりました。

1999年2月13日に行われたこの試合は、ダウンの応酬となるなど、予想をはるかに超える激闘が繰り広げられました。最終ラウンドまで両者一歩も譲らない五分の戦いでしたが、最終第12ラウンドにデ・ラ・ホーヤがクォーティからダウンを奪取。この終盤のダウンが決め手となり、クォーティは判定で敗れ、WBC王座獲得はなりませんでした。

その後のキャリアと引退

デ・ラ・ホーヤ戦後、クォーティは一階級上のスーパーウェルター級に転向します。2000年4月15日にはIBF世界スーパーウェルター級王者フェルナンド・バルガス（米国）に挑みましたが、12回判定で敗れ、二階級制覇は達成できませんでした。

その後も数試合を行いましたが、かつての輝きを取り戻すことはできず、2006年12月6日のロナルド・ライト戦で12回判定負けを喫したのを最後に、以降リングに上がることはありませんでした。シンプルながら強力なスタイルで時代を築き、無敗の世界王座奪取から激闘を経てリングを去ったアイク・クォーティは、ウェルター級史における記憶に残るボクサーの一人です。

獲得タイトル

WBA世界ウェルター級王座（防衛7度）

関連項目

男子ボクサー一覧
* 世界ボクシング協会(WBA)世界王者一覧

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