フェルナンド・バルガス

フェルナンド・バルガス（Fernando Vargas、1977年12月17日 - ）は、アメリカ合衆国の元プロボクサー。カリフォルニア州オックスナードで生を受けた彼は、スーパーウェルター級でIBFおよびWBAの世界タイトルを獲得した実力者です。「El Feroz」（エル・フェロス、狂暴な）のニックネームで知られ、その攻撃的なスタイルで多くのファンを魅了しました。彼の息子たち、フェルナンド、アマド、エミリアーノもまた、ボクシングの道を歩んでいます。

経歴

アマチュア時代

バルガスはアマチュアキャリアで早くから才能を開花させました。ジュニアオリンピックでは1992年に準優勝、翌1993年には優勝を果たしています。さらに1994年には全米選手権を制覇し、国内トップ選手としての地位を確立しました。国際舞台でも活躍し、1995年のパンアメリカン競技大会では銅メダルを獲得。そして1996年には、アトランタオリンピックに出場します。初戦は判定で勝利を収めましたが、続く2回戦で、後にこの大会で銅メダルを獲得するマリアン・シミオンと対戦し、僅差の判定で惜しくも敗れました。アマチュア時代の公式戦績は105戦100勝5敗という素晴らしい記録を残しています。

プロ転向と世界王座獲得

鳴り物入りでプロ転向を表明したバルガスは、プロモート会社であるメインイベンツ社と契約を結びます。1997年3月25日、故郷オックスナードでホルヘ・モラレスを相手にプロデビュー戦を行い、初回わずか56秒でのノックアウト勝利を飾りました。その後も快進撃を続け、1998年12月12日には、アトランティックシティでIBF世界スーパーウェルター級チャンピオンだったルイス・ラモン・カンパスに挑戦。7回終了時に相手陣営が棄権を申し入れたことでTKO勝利となり、プロ転向からわずか1年9ヶ月という驚異的なスピードで初の世界王座を獲得しました。

チャンピオンとなったバルガスは、精力的に防衛戦を行います。1999年3月13日にはハワード・クラークを4回TKOで退け初防衛。同年7月17日には元IBF王者のラウル・マルケスを11回TKOで破り2度目の防衛に成功します。12月4日には、後に2階級制覇を達成する技巧派ロナルド・ライトと対戦。ライトのディフェンスと巧みな戦術に苦戦を強いられましたが、最終的には12回判定で2-0の僅差ながら勝利し、3度目の防衛を果たしました。この試合で、デビュー以来続いていた連続KO勝利記録は17で止まりました。2000年4月15日には元WBA世界ウェルター級王者アイク・クォーティとも対戦。クォーティの高速ジャブと堅いガードに手を焼きますが、手数を出し続けることで判定勝ちを収め、4度目の防衛を果たしました。同年8月26日、ロス・トンプソンを4回TKOで破り、5度目の防衛に成功しました。

王座統一戦とキャリアの転機

2000年12月2日、バルガスのキャリアにおける大きな山場が訪れます。WBA世界スーパーウェルター級王者フェリックス・トリニダードとの王座統一戦です。この激闘は、初回にバルガスが2度のダウンを奪われるも、4回には逆にトリニダードからダウンを奪い返すという、まさにシーソーゲームとなりました。しかし、終盤にかけてトリニダードの強烈なプレッシャーに押され始め、最終12回に3度のダウンを奪われた末、レフェリーストップによるTKO負けを喫しました。これによりIBF王座を失い、WBA王座の獲得も叶いませんでした。

トリニダードがミドル級に転向し、WBA王座が空位となると、バルガスは再び世界王座へのチャンスを掴みます。2001年9月22日、ホセ・フローレスとのWBA並びにIBA世界スーパーウェルター級王座決定戦に臨み、7回KO勝ちで見事にWBA王座への返り咲きを果たしました。

しかし、リング外でもトラブルを経験します。2001年には過去に起こした暴行・監禁罪で有罪となり、懲役90日の判決を受けました。

2002年9月14日には、再びキャリア最大の試合の一つを迎えます。マンダレイ・ベイ・イベント・センターで、WBC世界スーパーウェルター級王者でありスーパースターのオスカー・デ・ラ・ホーヤとの王座統一戦です。この試合も激しい打ち合いとなりましたが、11回にダウンを奪われ、そのままレフェリーストップによるTKO負けを喫し、WBA王座を失い、WBC王座の獲得もなりませんでした。さらに、試合後のドーピング検査でアナボリックステロイドの陽性反応が出たため、9ヶ月間の出場停止と罰金処分が下されました。

負傷とキャリア終盤

出場停止処分明けの2003年12月12日、バルガスはトニー・マーシャルに勝利して復帰を果たしますが、この試合中に椎間板を負傷するというアクシデントに見舞われます。この怪我の影響で、彼は再び約1年3ヶ月もの長期ブランクを余儀なくされました。

2005年3月26日、スーパーミドル級契約のノンタイトル戦でレイムンド・ジョバールに判定勝利を収め、再びリングへ戻ります。同年8月20日には、後に世界2階級制覇王者となるハビエル・カスティリェホとも対戦し、判定勝ちを収めました。

キャリア終盤には、元世界王者シェーン・モズリーとの連続対戦が組まれます。2006年2月25日の挑戦者決定戦では、接戦となりながらも10回TKO負け。同年7月15日には再戦に挑みますが、この試合ではモズリーに終始圧倒され、6回TKO負けを喫し、リベンジは叶いませんでした。

現役最後の試合となったのは2007年11月23日、リカルド・マヨルガとのWBCアメリカ大陸スーパーミドル級王座決定戦でした。この試合は、記者会見でアクリル板越しに罵倒し合うなど、試合前から遺恨が深まりました。試合は激しい内容となりましたが、12回判定で0-2と敗れ、3連敗となったバルガスはこの試合を最後に現役を引退しました。

引退後、2011年にはヘンリー・ブキャナンとの対戦で一度は復帰が予定されていましたが、これは実現しませんでした。2014年には家族と共にリアリティ番組に出演するなど、引退後もメディアに登場しています。

戦績

プロボクシング戦績：31戦 26勝（22KO）5敗

獲得タイトル

IBF世界スーパーウェルター級王座（防衛5）
WBA世界スーパーウェルター級王座（防衛0）
IBA世界スーパーウェルター級王座

フェルナンド・バルガス