アイザック・ドーマン

アイザック・ドーマン（Isaac Dooman、1857年 - 1931年）は、明治時代に米国聖公会から日本へと遣わされた、アメリカ合衆国出身の宣教師であり教育者です。彼は、奈良英和学校や東京三一神学校（現在の聖公会神学院）で教鞭を執る傍ら、まだキリスト教の伝道が十分に行き届いていなかった地域にも積極的に赴き、教育活動や伝道を通じて新たな拠点を開拓するなど、日本におけるキリスト教の普及と教育の発展に多大な貢献をしました。

生涯と経歴

1857年、ドーマンは中東のペルシャ（現在のイラン）で、アルメニア人の家系に生まれました。幼少期や青年期に関する詳細な記録は少ないものの、彼の背景が後の活動に影響を与えた可能性は十分に考えられます。

27歳になった1884年、彼はアメリカ合衆国へと移住し、そこで市民権を取得しました。その後、ニューヨーク神学院で4年間にわたり神学を深く学び、1888年（明治21年）に卒業しました。この年、米国聖公会の海外伝道本部より、日本での伝道活動を行う宣教師に任命され、夫と共に日本の地を踏みしめることとなりました。

来日後、彼は同年3月に奈良県にある聖公会の教育機関、奈良英和学校に着任しました。ここでは教育者としての手腕を発揮し、当時の教え子の中には、後に京都帝国大学の教授となる米田庄太郎のような優秀な人材がいました。ドーマンは単に知識を教えるだけでなく、学生たちの精神的な成長にも寄り添ったと考えられます。

1891年（明治24年）、ドーマンは活躍の場を東京へと移しました。東京築地にあった東京三一神学校（現在の聖公会神学院）に、比較宗教学の講師として迎えられたのです。この東京への異動に際し、奈良英和学校時代の弟子である米田庄太郎も彼を慕って上京し、ドーマンの助手として彼の研究や教育活動を支えました。

東京での活動後、彼は群馬県前橋市へと赴任します。前橋聖公堂（現在の前橋聖マッテア教会）では、J. アンブラーの後任として司牧を務め、地域の人々との関わりを深めました。また、教育への情熱は冷めることなく、1897年（明治30年）には前橋市に英語夜学校を開設しました。これは、後に前橋聖マッテア教会英語夜学校として地域に根差した教育を行う機関の前身となりました。

さらに、ドーマンの活動範囲は広がり、1894年（明治27年）には和歌山聖救主教会でも司牧を行っています。この和歌山での滞在中に、後に聖公会神学院の校長となり、日本聖公会の司祭として活躍する稲垣陽一郎に洗礼を授けています。これは、彼が多くの人々の信仰の確立に関わった証と言えるでしょう。

ドーマンは、1923年（大正12年）までおよそ35年間にわたり、日本各地で精力的に伝道活動を続けました。既に活動の拠点があった奈良や和歌山だけでなく、当時まだキリスト教の伝道が十分に進んでいなかった川越や金沢といった地域にも積極的に出向き、教育と伝道の両輪で「新天地」を開拓していきました。

彼は、異国の地で生涯のほとんどを教育と伝道に捧げ、多くの日本人学生や信徒に影響を与えました。教育者としては学問を教え、宣教師としてはキリスト教の福音を伝え、そして開拓者としては困難な地にも希望の光を灯す役割を担ったのです。その活動は、明治から大正にかけての日本の教育史やキリスト教史において、重要な一頁を占めています。

彼の長い日本滞在中の働きは、単に教義を広めるにとどまらず、近代教育の普及や地域社会との連携にも貢献しました。アイザック・ドーマンは、その情熱と献身をもって、日本の多くの人々の心に深い足跡を残した人物と言えるでしょう。

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