アイスランドペニス博物館
アイスランドの首都レイキャヴィークに位置する「アイスランドペニス博物館（Hið Íslenzka Reðasafn）」は、その名の通り、陰茎の収集と展示に特化した世界でも類を見ないユニークな私設博物館です。同種の博物館としては世界で最も多くの標本を収蔵しており、学術研究の促進と啓蒙を目的としています。
当館には、実に93種、約280点に及ぶ動物たちの陰茎標本が展示されています。これらはクジラ目、鰭脚類（アザラシなど）、陸生哺乳類といった多岐にわたる種から集められており、サイズも様々です。最も大きな標本は、体長約25メートルのシロナガスクジラの一部で、その先端部だけで長さ170センチメートル、重さ70キログラムに達します。一方、最も小さな標本はハムスターの陰茎骨で、わずか2ミリメートルしかなく、観察には虫眼鏡が不可欠です。創設者は、これらのコレクションを37年にわたる陰茎収集の集大成であり、「誰かが成し遂げるべきことだった」と語っています。
興味深いのは、科学的に実在が確認できないエルフやトロールといったアイスランドの民話に登場する生物の陰茎標本も展示されている点です。民話では彼らは人目に見えないとされるため、エルフの標本も同様に見えないという趣向が凝らされています。
また、純粋な生物標本に加え、陰茎を主題とした芸術作品や工芸品もコレクションの一部です。例えば、ウシの陰嚢を再利用したランプシェードや、ハンドボールアイスランド代表選手の栄誉を称えて制作された銀色の彫像（選手の妻たちが見れば誰のものか分かると冗談めかして言われています）などがあり、その多様性も魅力の一つです。
長年にわたり、当館はヒトの陰茎標本の収蔵を目指していました。包皮や陰嚢などの一部は以前からありましたが、2011年についに最初の完全なヒト標本を獲得しました。これは、死後の提供を申し出ていた4名のドナーのうちの一人、アイスランド人男性パゥットル・アラソン氏（享年95歳）から提供されたものです。
アラソン氏は自身の「永遠の評判」のために寄贈を望みましたが、加齢による標本の状態を懸念していました。理想的な保存のためには、遺体が温かいうちに摘出・処置を行う必要がありましたが、実際の手術は完全には成功せず、標本は期待された形ではなく、縮こまった状態となりました。博物館側はこの結果に多少落胆しつつも、「より若く、大きく、状態の良い」標本を引き続き探求すると表明しています。この最初のヒト標本は、来館者から「古びて縮んでいる」「歳をとってこうならないでほしい」といった率直な反応をしばしば引き出しているそうです。
他にも、アメリカ人のトム・ミッチェル氏のように、自身の陰茎を「エルモ」と名付け、世界一有名な陰茎にしたいと願うドナーも現れ、死後寄贈の候補となっています。彼のユーモラスな取り組みや、アラソン氏との対比は、カナダのドキュメンタリー映画『最後の1本（The Final Member）』の主題となり、博物館のユニークな探求に光を当てました。
博物館は1997年に元教師のシグルズール・ハーターソン氏によって設立されました。彼の収集は、幼少期に受け取った牛の陰茎製の鞭がきっかけで始まったとされています。初期は職場に保管されていましたが、退職を機に公的な博物館としての設立へと至りました。設立当初はレイキャヴィークにありましたが、資金繰りの問題から一時的に北部のフーサヴィークへ移転しました。その後、息子のヒェルトゥル・ギスリ・シグルズソン氏に運営が引き継がれ、2012年に再び現在のレイキャヴィーク中心部へと戻りました。ヒェルトゥル氏は、外国からの高額な買収提案を断り、「博物館はアイスランドにあるべきだ」と語っています。
当館は年間数千人が訪れる人気観光スポットであり、来館者の約6割が女性であることも特筆されます。ゲストブックには様々な国の訪問者からのユニークなコメントが寄せられています。創設者は、女性器の博物館設立は「別の誰かがやるべき仕事だ」としつつも、その展示方法には興味があると述べています。
博物館のウェブサイトによれば、その目的は「個人が、体系化された科学的な方法により陰茎学を真摯に学ぶ」機会を提供することです。文化人類学者は、このような博物館がアイスランド社会に受け入れられていることは、1990年代以降の社会のオープン化と新しいアイデアに対する寛容さを示す指標であると分析しており、アイスランド文化における当館の役割の重要性を指摘しています。
所在地: アイスランド、レイキャヴィーク、ロイガヴェーグル116番地
開館時間: 午前10時から午後6時まで
休館日: なし
入館料: 大人1,500クローナ、障害者・年金生活者1,000クローナ。13歳以下の児童は保護者同伴で無料。
収蔵品
当館には、実に93種、約280点に及ぶ動物たちの陰茎標本が展示されています。これらはクジラ目、鰭脚類（アザラシなど）、陸生哺乳類といった多岐にわたる種から集められており、サイズも様々です。最も大きな標本は、体長約25メートルのシロナガスクジラの一部で、その先端部だけで長さ170センチメートル、重さ70キログラムに達します。一方、最も小さな標本はハムスターの陰茎骨で、わずか2ミリメートルしかなく、観察には虫眼鏡が不可欠です。創設者は、これらのコレクションを37年にわたる陰茎収集の集大成であり、「誰かが成し遂げるべきことだった」と語っています。
興味深いのは、科学的に実在が確認できないエルフやトロールといったアイスランドの民話に登場する生物の陰茎標本も展示されている点です。民話では彼らは人目に見えないとされるため、エルフの標本も同様に見えないという趣向が凝らされています。
また、純粋な生物標本に加え、陰茎を主題とした芸術作品や工芸品もコレクションの一部です。例えば、ウシの陰嚢を再利用したランプシェードや、ハンドボールアイスランド代表選手の栄誉を称えて制作された銀色の彫像（選手の妻たちが見れば誰のものか分かると冗談めかして言われています）などがあり、その多様性も魅力の一つです。
ヒトの陰茎標本
長年にわたり、当館はヒトの陰茎標本の収蔵を目指していました。包皮や陰嚢などの一部は以前からありましたが、2011年についに最初の完全なヒト標本を獲得しました。これは、死後の提供を申し出ていた4名のドナーのうちの一人、アイスランド人男性パゥットル・アラソン氏（享年95歳）から提供されたものです。
アラソン氏は自身の「永遠の評判」のために寄贈を望みましたが、加齢による標本の状態を懸念していました。理想的な保存のためには、遺体が温かいうちに摘出・処置を行う必要がありましたが、実際の手術は完全には成功せず、標本は期待された形ではなく、縮こまった状態となりました。博物館側はこの結果に多少落胆しつつも、「より若く、大きく、状態の良い」標本を引き続き探求すると表明しています。この最初のヒト標本は、来館者から「古びて縮んでいる」「歳をとってこうならないでほしい」といった率直な反応をしばしば引き出しているそうです。
他にも、アメリカ人のトム・ミッチェル氏のように、自身の陰茎を「エルモ」と名付け、世界一有名な陰茎にしたいと願うドナーも現れ、死後寄贈の候補となっています。彼のユーモラスな取り組みや、アラソン氏との対比は、カナダのドキュメンタリー映画『最後の1本（The Final Member）』の主題となり、博物館のユニークな探求に光を当てました。
歴史と文化への影響
博物館は1997年に元教師のシグルズール・ハーターソン氏によって設立されました。彼の収集は、幼少期に受け取った牛の陰茎製の鞭がきっかけで始まったとされています。初期は職場に保管されていましたが、退職を機に公的な博物館としての設立へと至りました。設立当初はレイキャヴィークにありましたが、資金繰りの問題から一時的に北部のフーサヴィークへ移転しました。その後、息子のヒェルトゥル・ギスリ・シグルズソン氏に運営が引き継がれ、2012年に再び現在のレイキャヴィーク中心部へと戻りました。ヒェルトゥル氏は、外国からの高額な買収提案を断り、「博物館はアイスランドにあるべきだ」と語っています。
当館は年間数千人が訪れる人気観光スポットであり、来館者の約6割が女性であることも特筆されます。ゲストブックには様々な国の訪問者からのユニークなコメントが寄せられています。創設者は、女性器の博物館設立は「別の誰かがやるべき仕事だ」としつつも、その展示方法には興味があると述べています。
博物館のウェブサイトによれば、その目的は「個人が、体系化された科学的な方法により陰茎学を真摯に学ぶ」機会を提供することです。文化人類学者は、このような博物館がアイスランド社会に受け入れられていることは、1990年代以降の社会のオープン化と新しいアイデアに対する寛容さを示す指標であると分析しており、アイスランド文化における当館の役割の重要性を指摘しています。
利用案内
所在地: アイスランド、レイキャヴィーク、ロイガヴェーグル116番地
開館時間: 午前10時から午後6時まで
休館日: なし
入館料: 大人1,500クローナ、障害者・年金生活者1,000クローナ。13歳以下の児童は保護者同伴で無料。
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