アイダホ郡 (アイダホ州)

アイダホ郡

アメリカ合衆国アイダホ州の北中部に広がるアイダホ郡は、その面積において州内で最大を誇る広大な地域です。およそニュージャージー州に匹敵する広がりを持つこの郡の2010年時点での人口は16,267人でした。郡の中心機能である郡庁はグレインジビルに置かれており、ここが人口3,141人を擁する郡内最大の都市となっています。ただし、郡庁所在地は設立以来、フロレンス（1864年〜1875年）、マウントアイダホ（1875年〜1902年）と変遷を経て現在のグレインジビルに至っています。アイダホ郡はまた、アメリカ合衆国内で州と同じ名前を持つ7つの郡の一つとしても知られています。

歴史的背景

アイダホ郡の歴史は、アイダホ準州が誕生する以前に遡ります。1861年にワシントン準州の一部として設立されたこの郡は、その名を1860年にコロンビア川を進水した蒸気船「アイダホ号」にちなんで名付けられました。これは、後に形成されるアイダホ準州や現在のアイダホ州よりも郡の名前が先に存在していたという興味深い事実を示しています。その後、1864年2月4日にアイダホ準州議会によって現在の形で再編成されました。

地理的な特徴

アイダホ郡の総面積は8,502.48平方マイル（約22,021.3平方キロメートル）に及び、そのうち陸地が8,484.88平方マイル（約21,975.7平方キロメートル）を占め、水域はわずか0.21パーセントです。この広大な土地は、北をクリアウォーター郡、北東をモンタナ州のミズーラ郡、東を同じくモンタナ州のラバリ郡、南東をレムヒ郡、南をバレー郡、南西をアダムズ郡、西をオレゴン州のワローワ郡、そして北西をネズパース郡とルイス郡に囲まれています。

地理的に最もユニークな点の一つとして、アイダホ郡はアメリカ国内でも数少ない、複数の標準時が混在する郡である点が挙げられます。郡内を流れるサーモン川がこの時間帯の境界となっており、郡領域の大部分は太平洋標準時に属しますが、リギンズ市を含むサーモン川より南側の地域は山岳部標準時が適用されます。

また、アイダホ郡は豊かな自然環境に恵まれており、その広大な面積の多くが国立保護地域や国有林に指定されています。具体的には、ビタールート国立の森、クリアウォーター国立の森、ヘルズキャニオン国立レクリエーション地域、ネズパース国立の森、ネズパース国立歴史公園、ペイエット国立の森、サーモン・チャリス国立の森、ワロワ・ウィットマン国立の森の一部が含まれています。さらに、フランックチャーチ・返らざる川原生地、ゴスペルハンプ原生地、ヘルズキャニオン原生地、セルウェイ・ビタールート原生地といった原生地域も郡内に存在します。

特筆すべきは、郡内には総計4,431,720エーカー（約17,934.5平方キロメートル）もの広大な国有林が存在し、これはアラスカ州を除いたアメリカ国内で最大の規模となります。特にネズパース国立の森はその全てがアイダホ郡内に位置しており、単一の郡に含まれる国有林としては国内で最大です。

交通網

広大なアイダホ郡内の交通は、いくつかの主要な高規格道路によって支えられています。アメリカ国道12号線や95号線が南北または東西を結び、これにアイダホ州道13号線、14号線、62号線、64号線などが加わり、郡内の各地域を結んでいます。また、この広大な自然の中には、多くの小型空港が点在しています。チェンバレン森林局空港やコールドメドウズ森林局空港など、特に森林管理やレクリエーションに関連すると思われる施設が多く見られます。その他、コットンウッド市民空港、アイダホ郡空港（グレインジビル）、カミア市民空港、コースケー市民空港など、地域住民や訪問者の利用する空港も複数存在します。

主な居住地域

郡内には、コットンウッド、フェルディナンド、郡庁所在地のグレインジビル、コースケー、リギンズ、スタイツ、ホワイトバードといった7つの都市が点在しています。これらの都市は、郡内の主要な生活・経済拠点となっています。

まとめ

アイダホ郡は、その歴史、広大な自然、そして二つの標準時が混在するという地理的な特異性により、アイダホ州の中でも特に注目すべき郡と言えるでしょう。広大な国有林と多様な国立保護地域が織りなす豊かな自然景観は、アウトドア活動の宝庫であり、蒸気船に由来する郡名や郡庁所在地の変遷といった歴史的な背景も、この地域の魅力に深みを与えています。

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