アイピーモバイル

アイピーモバイル株式会社は、かつて東京都千代田区に本社を構え、高速データ通信サービスの提供を目指していた企業です。2GHz帯の電波割当を受け、携帯電話事業への新規参入を計画していましたが、2007年10月30日に自己破産を申請し、事業を断念しました。

事業計画と挫折

2005年11月、アイピーモバイルはイー・モバイル（現ソフトバンク）やBBモバイル（現ソフトバンクグループ）と共に、2GHz帯の電波割当を受けました。同社はデータ通信に特化し、音声通話サービスの提供は計画していませんでした。当初は2006年10月1日に東名阪地区でサービスを開始し、2008年から全国展開を目指していました。2009年度には加入者数430万人、サービス開始5年後には1160万人を見込んでいましたが、2006年秋と2007年春にサービス開始を二度延期しました。その後も事業開始の見通しが立たず、電波割当から2年以内の運用開始という条件を満たせず、撤退を余儀なくされました。

沿革

2002年11月20日: 資本金3億円で設立。
2005年11月: 総務省から2GHz帯の電波割当を受ける。当初、2006年10月のサービス開始を予定していたが、2007年春に延期を発表。
2007年1月: 2007年5月頃に試験サービスを開始し、同年秋に商用サービスを開始する予定を公表。
2007年4月8日: 日経BP社のWebサイトで資金難による事業断念の報道が流れる。NHK等のテレビニュースやITmediaなどのIT系ニュースサイトでも同様の報道があり、参入断念が濃厚と見られた。
2007年4月10日: 報道に対し記者会見を開き、参入断念の事実はないと否定。マルチメディア総合研究所が保有していた同社株の69.23%を森トラストが取得したことを発表。
2007年7月13日: 森トラストが保有するアイピーモバイル全株式を米国NextWave Wireless社に譲渡することで両社が合意。
2007年9月19日: NextWave Wireless社に譲渡されていたアイピーモバイル全株式を反対売買のオプションを行使し、再度森トラストに譲渡することで両社が合意。さらに森トラストは杉村会長に保有株式全てを譲渡。しかし、アイピーモバイル側は「経営陣への売却は把握していない」と発表。
2007年9月28日: 竹内一斉社長が記者会見を実施。アイピーモバイルの株式には譲渡制限が付いており、取締役会の承認なしに譲渡できないが、現取締役が会長への譲渡を拒否したため、会長以外の取締役が解任されることとなった。現経営陣は、杉村五男会長の資金提供元が不明確であること、森トラストの経営関与を求めていることを理由に株式売却に反対。
2007年10月2日: 杉村五男会長が竹内一斉社長を含む取締役4名を解任し、自身に近い人物を新取締役に任命。その後、杉村氏が社長に就任し、森トラストが保有する全株式が杉村氏に正式に譲渡された。
2007年10月23日: 事業開始に必要な資金支援を香港の投資会社「ディスタコム」に要請したと発表。3月までに140～150億円の出資を得られる見込みだった。また、サービス開始後の通信方式をTD-CDMAからTD-SCDMAに変更する計画を示したが、総務省の認可が条件だった。
2007年10月30日: 東京地方裁判所に自己破産を申請。携帯電話事業への参入計画を断念し、割当られた周波数帯を総務省に返上。
2007年12月12日: 総務省は電波監理審議会から、返上された2GHz帯の認定について免許の取り消しが適当であるとする答申を受け、同日、認定の取り消しを決定。

その後

2014年現在、アイピーモバイルに割り当てられていた2GHz帯のTDDバンドは、どの事業者にも割り当てられておらず、その割り当て方針も明らかにされていません。ただし、3GPPは、この帯域をTD-LTEのBand 34として規定しています。アイピーモバイルの事業計画は、資金繰りの問題や経営陣の混乱により頓挫し、日本のモバイル通信業界にその名を残すこととなりました。

外部リンク

* アイピーモバイル: (2007年11月にサイトが閉鎖されたため、インターネットアーカイブにより保存されたコンテンツへのリンク)

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