アイブロックスの惨事

アイブロックスの惨事

アイブロックスの惨事（英語: Ibrox disaster）は、スコットランドのグラスゴーに位置するアイブロックス・スタジアムで、1世紀の間に発生した二つの重大な群衆事故を指します。初めの事故は1902年に起き、25人が死亡。二度目の事故は1971年に起き、66人が命を落としました。

1902年の事故

事故は1902年4月5日に発生しました。この日は、ブリティッシュ・ホーム・チャンピオンシップのスコットランド代表対イングランド代表の試合が予定されていました。観衆の関心が高く、スタジアムには68,114人ものファンが詰めかけました。スタンドは改修工事が施されていましたが、試合開始前から西側スタンドは多くの観客で混雑しており、鉄製の支柱と板張りの階段状立見席が群集の圧力で振動していました。

試合開始から数分後、突如として西側スタンドの床が崩落し、約数百人の観客が15メートル下の地面に転落しました。この事故の混乱はさらに広がり、観客がピッチに流れ込む事態となりました。結果として、25人が犠牲になり、518人が負傷する大惨事となりました。負傷者の中には重傷や軽傷を負った者も多く、現場は血の海と化しました。試合はその後再開され、最終的には1-1の引き分けで終わりましたが、地元紙はこの状態での試合続行には強い反発を示しました。

1971年の事故

1971年の事故は、レンジャーズFCとセルティックFCの伝統的なダービーマッチ「オールドファーム」において発生しました。多くの観衆が集まったこの試合で、両チームは無得点のまま時間が経過していました。しかし、89分にセルティックが先制し、続いてアディショナルタイムにレンジャーズが同点に追いつくと、歓声がスタジアムを包みました。この瞬間、西側スタンドの13番階段で悲劇が起こりました。

混雑した階段において、観客が出入口に向かおうとする波と、試合に戻ろうとする波がぶつかり合い、金属製の手すりが崩壊しました。その結果、将棋倒しが発生し、66人が亡くなる事態となりました。この事故には200人以上の負傷者が出ましたが、未成年者の犠牲者も含まれていました。

事故の後、エリザベス2世、ローマ法王パウロ6世をはじめ、国の高官らが弔意を表し、原因究明の調査が行われました。また、国際サッカー連盟（FIFA）もスタジアムの安全性を調査すると表明しました。

影響とその後の改善

1973年以降、アイブロックス・スタジアムの改装工事が始まり、最終的には全着席方式のスタジアムへと生まれ変わりました。この新しいスタジアムは安全性を重視し、収容人数は10万人から4万4千人に削減されました。これにより、観客の安全を確保するための施策が講じられました。

アイブロックスの惨事を受けて行われた改修工事は、サッカー界における安全対策の重要性を再認識させ、多くのスタジアムの設計・運営に影響を与えることになりました。特に、1985年のブラッドフォード・サッカー場火災や、1989年のヒルズボロの悲劇においても、これまでの教訓が活かされることとなりました。アイブロックスは、その後、最新の設備を備えたスタジアムとして生まれ変わり、サッカーの聖地としての地位を確立しました。

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