アイム・ジャスト・ケン

「アイム・ジャスト・ケン」（I'm Just Ken）は、2023年の映画『バービー』のサウンドトラック『バービー・ザ・アルバム』のために、カナダ人俳優ライアン・ゴズリングが歌った楽曲です。マーク・ロンソンとアンドリュー・ワイアットが作詞・作曲・プロデュースを担当しました。

この曲は、公開後瞬く間に世界中で人気となり、Spotifyで7000万回以上、YouTubeで300万回以上再生されました。批評家からも高い評価を受け、第29回クリティクス・チョイス・アワードで歌曲賞を受賞したほか、第66回グラミー賞の視覚メディア楽曲賞、第96回アカデミー賞の歌曲賞にもノミネートされました。

背景

「アイム・ジャスト・ケン」は、センチメンタルな「80年代のパワー・バラード」と評されています。映画のプロモーションで使われていた「She's everything. He's just Ken（彼女は全て。彼はただのケン）」というフレーズは、この曲の内容を暗示しています。この曲は、映画の中で自身の存在意義に悩むケンの心情を、力強く、そして切なく表現しています。

制作

「アイム・ジャスト・ケン」は、『バービー・ザ・アルバム』のために最初に書かれた曲の1つです。プロデューサーのマーク・ロンソンは、『バービー』の脚本を読んだ際、ケンのキャラクターに強く共感し、この曲の制作を決意しました。

ロンソンがデモを制作し、監督のグレタ・ガーウィグに送った当初、彼はこの曲が映画に使われるとは思っていませんでした。しかし、ガーウィグはこの曲を非常に気に入り、ケン役のライアン・ゴズリングに聴かせました。ゴズリングは、この曲に「深い」感銘を受け、映画で披露したいと申し出ました。その結果、ガーウィグはこの曲に合わせて映画の重要な場面を書き直す必要がありました。

ロンソンの同僚であり、サウンドトラックのプロデューサーでもあるアンドリュー・ワイアットは、ロンソンがゴズリングのボーカル録音のためにロンドンへ向かう前に、楽曲を完成させました。ロンソンはインタビューで、「ライアンとのスタジオでのパフォーマンスによって、曲全体の質が向上した。当初、投げやりに感じられたセリフが、彼によってより大きな意味を持つようになった」と語っています。ゴズリングがトラックを録音したのは、わずか3時間でした。

ゴズリングのボーカル録音が終わった後、ロンソンはガンズ・アンド・ローゼズのギタリストであるスラッシュにトラックを送り、彼はこの曲を「クール」だと感じ、ギター演奏に協力することになりました。さらに、ギタリストのウルフギャング・ヴァン・ヘイレン、フー・ファイターズのドラマーであるジョシュ・フリースも、この曲の演奏に参加しています。

発表

映画『バービー』の公開に先立ち、ワーナー・ブラザースは2023年7月10日に、ゴズリングが「アイム・ジャスト・ケン」を披露するクリップを公開しました。さらに、2023年8月21日には、リハーサル映像と映画のミュージカルシーンを組み合わせた「舞台裏」ミュージックビデオが公開されました。これらの発表は、映画への期待感をさらに高めました。

パフォーマンス

ライアン・ゴズリングは、この曲を様々な舞台で披露しています。そのパフォーマンスは、観客を魅了し、曲の人気をさらに高めています。

受賞とノミネート

第29回クリティクス・チョイス・アワード歌曲賞
第66回グラミー賞視覚メディア楽曲賞ノミネート
第96回アカデミー賞歌曲賞ノミネート

チャート

「アイム・ジャスト・ケン」は、様々な音楽チャートで上位にランクインし、その人気を証明しました。

週間チャート

年間チャート

パロディ

この曲の人気を受けて、様々なパロディも制作されました。2023年10月14日放送の『サタデー・ナイト・ライブ』では、コメディアンのピート・デイヴィッドソンが「I'm Just Pete」というパロディを披露し、自身の私生活を自虐的に笑いに変えました。

『Ken the EP』

2023年12月20日、ゴズリングとロンソンは、「アイム・ジャスト・ケン」のオリジナルバージョンに加え、3つの追加バージョンを収録したEP盤『Ken the EP』を発表しました。このEPには「Merry Kristmas Barbie」という副題が付けられており、スタジオでのゴズリング、ロンソン、ワイアットによるクリスマスバージョンのパフォーマンスビデオも公開されています。

参考文献

『バービー・ザ・アルバム』CDライナーノーツ

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