アイム・トライン・トゥ・ゲット・ホーム

アイム・トライン・トゥ・ゲット・ホーム

『アイム・トライン・トゥ・ゲット・ホーム』は、名トランペット奏者ドナルド・バードが1964年に録音し、翌1965年に発表したスタジオ・アルバムです。この作品は、前年の『ア・ニュー・パースペクティヴ』や同時期に発表された『アップ・ウィズ・ドナルド・バード』といったアルバムと同様に、ジャズの演奏に大規模なコーラス隊を導入した点で注目されます。これらのコーラス作品で音楽監督を務めたコールリッジ・パーキンソンが、本作でも指揮を執っています。

アルバム全体の音楽性は、黒人霊歌からの深い影響を基盤としていますが、特定のスタイルに限定されるものではありません。本作に6曲中3曲を提供したピアニストのデューク・ピアソンは、この作品について「ドナルド自身の根源的な音楽性に根差しており、ドナルド本人と同様、ソウルやアヴァンギャルドといった枠にとらわれず、多様な音楽性を持つ」とコメントしています。実際、黒人霊歌の影響が色濃い中で、ピアソン作の「マーチ・チルドレン」は、宗教的な意味合いを持たず「行進曲風のメロディラインを持つブルース」と説明されており、アルバム内の音楽的な幅広さを示しています。

収録曲は以下の通りです。

ブラザー・アイザック - "Brother Isaac" (Donald Byrd)
ノア - "Noah" (Duke Pearson)
アイム・トライン・トゥ・ゲット・ホーム - "I'm Tryin' to Get Home" (Donald Byrd)
アイヴ・ロングド・アンド・サーチト・フォー・マイ・マザー - "I've Longed and Searched for My Mother" (Donald Byrd)
マーチ・チルドレン - "March Children" (D. Pearson)
パーリー・ゲイツ - "Pearly Gates" (D. Pearson)

本作の録音には、ドナルド・バード（トランペット、フリューゲルホルン）を中心に、ジャズ界の錚々たるミュージシャンが集結しました。レギュラー・バンドのメンバーとして、スタンリー・タレンタイン（テナー・サクソフォーン）、グラント・グリーン（ギター）、ハービー・ハンコック（ピアノ）、フレディ・ローチ（オルガン）、ボブ・クランショウ（ベース）、グラディ・テイト（ドラムス）が参加しています。さらに、大規模なブラス・セクションがサウンドに厚みを加えており、アーニー・ロイヤル、スヌーキー・ヤング、ジミー・オーウェンズ、クラーク・テリー、ジョセフ・フェランテといったトランペット奏者、J・J・ジョンソン、ジミー・クリーブランド、ヘンリー・コッカー、ベニー・パウエルといったトロンボーン奏者、そしてジム・バフィントン、ボブ・ノーザーン（フレンチ・ホルン）、ドン・バターフィールド（チューバ）らが名を連ねています。また、総勢8名にも及ぶボーカリストが参加しましたが、彼らの個々の名前はクレジットされていません。この豪華かつ大編成のアンサンブルを、コールリッジ・パーキンソンが指揮しています。

音楽評論家からの評価としては、スコット・ヤナウがオールミュージックにおいて5点満点中2点を与え、「興味深い瞬間も多く含まれているが、先行する『ア・ニュー・パースペクティヴ』で示された水準には達していない」と評しています。この評価は、コーラスをフィーチャーしたバードの諸作品の中でも、本作が比較対象となる前作ほどには高く評価されなかったという側面を示唆しています。

『アイム・トライン・トゥ・ゲット・ホーム』は、ドナルド・バードのキャリアにおけるコーラス導入期の一作として、ジャズにゴスペルやソウルといった要素を取り込もうとする試み、そして大規模なアンサンブルによるサウンドへの探求を記録した重要なアルバムと言えるでしょう。

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