デューク・ピアソン

デューク・ピアソン（Duke Pearson、1932年8月17日 – 1980年8月4日）は、アメリカ合衆国のジャズ界において、ピアニスト、作曲家、そしてプロデューサーとして多大な貢献をした人物です。特に名門ブルーノート・レコードにおいて、1960年代のハード・バップサウンドを築き上げる上で中心的な役割を果たしました。音楽データベース「オールミュージック」は、彼のプロデューサーとしての手腕を称賛し、同時代のブルーノート作品の根幹をなしたと評しています。

生涯と初期のキャリア

ジョージア州アトランタでコロンバス・カルヴィン・ピアーソン・ジュニアとして生まれた彼は、幼少期に音楽に触れます。最初は金管楽器を学びましたが、歯の問題から断念し、ピアノへと転向しました。音楽の才能が芽生えると、おじからジャズ界の巨匠デューク・エリントンにちなんだ愛称「デューク」で呼ばれるようになります。クラーク・アトランタ大学在学中から地元の楽団で活動し、ピアノと共にトランペットも演奏しました。米国陸軍での勤務を経て、ジョージア州やフロリダ州でプロのミュージシャンとして活動を開始し、タフ・スミスやリトル・ウィリー・ジョンといったアーティストと共演しています。

ニューヨークへ、ドナルド・バードとの出会い

1959年1月、ピアソンはニューヨークへと活動拠点を移します。この地で彼はアート・ファーマーや、ベニー・ゴルソン率いる「ジャズテット」といった著名なグループとの共演を通じて頭角を現しました。特にトランペット奏者のドナルド・バードは、ピアソンの演奏に感銘を受け、自身の新しいバンドへの参加を強く勧めました。この出会いは、その後のピアソンのキャリアに大きな影響を与えます。1961年には、人気歌手ナンシー・ウィルソンのツアーピアニストを務めるなど、ニューヨークのジャズシーンで確固たる地位を築いていきました。同年、ジャズテットでの活動予定がありましたが、病気により参加できず、代わりに若きハービー・ハンコックが抜擢されるという出来事もありました。

ブルーノート時代とその影響

ドナルド・バードとの共同作業は続き、1963年にはバードの傑作アルバム『ア・ニュー・パースペクティブ』において、4曲の編曲を担当しました。ブラジル滞在から着想を得た「贖い主キリスト」の編曲は特に評価が高く、曲自体も大きな成功を収めました。同年、ピアソンの才能はブルーノート・レコードの創設者たちの目に留まります。A&R（アーティスト＆レパートリー）担当だったアイク・ケベックの死去に伴い、ピアソンはその重要なポストの後任としてブルーノートの重要なポストに就任しました。1963年から1970年にかけて、彼はブルーノートの作品群に多大な影響を与えました。プロデューサーとして、ハード・バップからソウル・ジャズに至るまで、レーベルのサウンドの多様性を広げ、多くのアーティストの才能を引き出しました。同時に、自己名義のリーダーアルバムも多数制作し、洗練された作曲能力とピアニストとしての実力を示しました。また、この時期、彼はドナルド・バードと共同でビッグバンドを結成し、アトランティック・レコードでも録音を行っています。このバード＝ピアソン楽団には、チック・コリアやペッパー・アダムスといった才能あふれるミュージシャンが参加していました。

晩年と遺産

ブルーノートは1966年にリバティ・レコードに買収され、経営体制が変化します。創設者たちの引退や死去が続く中、ピアソンも1971年にブルーノートを離れることを決めました。その後は、母校クラーク大学で教職に就き、教育者としても活動しました。1973年にはカーメン・マクレエやジョー・ウィリアムズとのツアーに参加するなど、再び演奏活動も活発に行い、自身のビッグバンドを再結成する試みも行っています。彼の作曲した「ジャニーヌ」は、現在ではジャズのスタンダードナンバーとして広く認識され、キャノンボール・アダレイをはじめ多くのミュージシャンにカバーされています。

残念ながら、1970年代に多発性硬化症を患い、次第に健康がすぐれなくなりました。病気の影響により、彼の音楽活動は徐々に困難になり、1980年8月4日、47歳という若さでこの世を去りました。デューク・ピアソンは、優れたピアニスト、記憶に残る楽曲の作曲家としてだけでなく、ブルーノート・レコードの黄金期を支えたプロデューサーとして、ジャズ史にその名を刻んでいます。彼の残した音楽は、今も多くのファンに愛され続けています。

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