アイラ・ヘイズ

アイラ・ヘイズの生涯

アイラ・ヘイズ（Ira Hayes, 1923年1月12日 - 1955年1月24日）は、アメリカ海兵隊の軍人であり、硫黄島の戦いで摺鉢山に星条旗を掲げた6人の兵士の一人です。彼はピマ族出身で、アメリカ先住民として唯一この歴史的な瞬間に立ち会いました。

生い立ち

アイラは1923年1月12日にアリゾナ州で生まれました。幼少期から寡黙で物静かな性格であったと伝えられています。保留地の小学校を卒業後、フェニックス・インディアン学校に進学しました。

軍歴

1942年9月、19歳で海兵隊に入隊。基礎訓練後、落下傘学校に入学し、ピマ族として初めて同校を卒業しました。1943年3月にはニューカレドニア島に到着し、実戦を経験します。ベララベラ島やブーゲンビル島での戦闘に参加した後、1944年に一時帰国し、所属部隊の解散に伴い休暇を得ました。

硫黄島の戦い

1944年に部隊復帰後、第5海兵師団に転属となり、ペンドルトン基地で訓練を受けました。1945年1月には硫黄島の戦いに参加、2月23日には摺鉢山山頂に星条旗を掲げた6人のうちの一人となりました。この写真はアメリカで大きな話題となりましたが、アイラはその後も硫黄島で戦闘を続けました。

星条旗掲揚後

ルーズベルト大統領の命令により、写真に写った6人の海兵隊員の身元が調査されました。アイラは当初、自分の名前が公になることを恐れていましたが、最終的に身元が判明。国債キャンペーンのために、他の2人のメンバーと共にアメリカ各地を回ることになりました。しかし、その重圧からアルコールに溺れるようになり、ツアー中に姿を消してしまう事件も起こしました。

戦後の苦悩

終戦後、アイラは占領軍として日本に勤務しましたが、帰国後は「硫黄島の英雄」としての重圧に苦しみ、酒に溺れる生活を送りました。何度か逮捕され、留置所を出入りする日々が続きました。彼は、ハーロン・ブロックの家族を訪ね、彼が写真に写っている6人のうちの一人であることを伝えました。その後も、様々な行事や映画撮影に参加しましたが、精神的な苦痛は癒えませんでした。

1953年にはシカゴ・サンタイムズ紙に報道され、アルコール中毒からの回復を支援する基金が設立されました。一時的に好転したかに見えましたが、再び酒に溺れ、最終的には故郷に戻りました。

1954年にはアーリントン国立墓地で海兵隊戦争記念碑の除幕式が行われ、生存者3人が再会しましたが、これが最後の対面となりました。

1955年1月24日、アイラは過度のアルコール摂取が原因で事故死し、生涯を終えました。葬儀には多くの人が参列し、彼の遺体はアーリントン国立墓地に埋葬されました。

その後

1964年にはジョニー・キャッシュが、アイラの人生を歌った「アイラ・ヘイズのバラッド」を発表し、ボブ・ディランも後にこの曲をカバーしました。アイラは、映画『硫黄島の砂』や『父親たちの星条旗』で描かれ、その生涯は今も語り継がれています。

まとめ

アイラ・ヘイズは、硫黄島の戦いで星条旗を掲げた象徴的な存在でしたが、その後の人生は英雄としての重圧と戦い続けた苦悩に満ちたものでした。彼の生涯は、戦争の英雄が抱える心の傷や、社会からの期待と現実とのギャップを考えさせられる物語として、深く記憶されるべきでしょう。

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