アイ・ウォナ・ビー・ユア・マン

「彼氏になりたい」：ローリング・ストーンズとビートルズをつないだ一曲

1960年代初頭、イギリスの音楽シーンを席巻したローリング・ストーンズとビートルズ。その両バンドを繋ぐ重要な楽曲として知られるのが、「彼氏になりたい」(I Wanna Be Your Man)です。この曲は、ジョン・レノンとポール・マッカートニーによって書かれ、1963年にローリング・ストーンズによって最初にリリースされました。

ローリング・ストーンズ版：バンド初期のヒット曲

ローリング・ストーンズは1963年11月1日、「彼氏になりたい」を2作目のシングルとしてリリース。全英シングルチャートで最高12位を記録し、バンド初期の代表的なヒット曲となりました。B面には、メンバー全員による共作「ストーンド」が収録され、ストーンズのオリジナル曲が初めてレコード化されたことでも注目に値します。

この楽曲誕生の背景には、ローリング・ストーンズのマネージャー、アンドリュー・オールダムの尽力がありました。彼はレノンとマッカートニーと偶然出会い、ストーンズのために楽曲提供を依頼。未完成だった「彼氏になりたい」をストーンズのメンバーが気に入り、その場で完成にこぎつけました。レコーディングは3週間後の10月7日に行われ、ブライアン・ジョーンズのギターソロやバッキングボーカルが楽曲に独特の風味を加えています。なお、オリジナルアルバムには未収録で、アルバム初収録はイギリスでは1972年、アメリカでは1989年と、かなり後になってからのことです。

演奏面では、1964年のBBC『トップ・オブ・ザ・ポップス』での初パフォーマンスや、2022年のリヴァプール公演での演奏など、長年にわたり演奏され続けてきました。特に2022年の公演では、リヴァプールとビートルズへのオマージュとして演奏された点が興味深いです。

ビートルズ版：リンゴ・スターのリードボーカル

ビートルズは「彼氏になりたい」を、1963年11月22日発売のイギリス盤『ウィズ・ザ・ビートルズ』、1964年1月20日発売のアメリカ盤『ミート・ザ・ビートルズ』に収録しました。リードボーカルはリンゴ・スターが担当し、彼にとっての代表曲の一つとなっています。レノンは後にこの曲を「通行人に配るチラシみたいなものだった」と評しており、ビートルズがストーンズをどう見ていたかを示す興味深い発言といえるでしょう。

ビートルズ版のレコーディングは、1963年9月から10月にかけてEMIレコーディング・スタジオで行われ、スターのボーカルはダブルトラックで録音されました。BBCセッションの録音や、テレビ番組用の演奏なども残っており、1994年発売の『ザ・ビートルズ・ライヴ!! アット・ザ・BBC』や1995年発売の『ザ・ビートルズ・アンソロジー1』に収録されています。ビートルズ解散後も、リンゴ・スターは自身のバンドでこの曲を演奏し続けています。

ローリング・ストーンズとビートルズの共通項

「彼氏になりたい」は、ローリング・ストーンズとビートルズという、1960年代を代表する2つのバンドを繋ぐ楽曲です。レノン＝マッカートニーというソングライター、そして両バンドによる演奏、様々なコンピレーションアルバムへの収録など、両バンドの音楽史における重要性を示す証拠といえるでしょう。この一曲は、それぞれのバンドの個性を際立たせながらも、両バンドの音楽的つながりを象徴する、興味深い作品なのです。

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