ザ・ビートルズ・アンソロジー1

ザ・ビートルズ・アンソロジー1：ビートルズ初期から秘蔵音源までを網羅した歴史的アルバム

1995年、ビートルズの歴史を紐解くコンピレーション・アルバム『ザ・ビートルズ・アンソロジー1』がリリースされました。CDに加え、後に3枚組LPレコードでも発売され、世界中のビートルズファンを魅了しました。本作は、単なるベスト盤ではなく、彼らの初期時代から『ビートルズ・フォー・セール』までの貴重な未発表音源やデモ、別テイクを多数収録した、まさに歴史的アーカイブと言える作品です。

クオリーメン時代から初期ビートルズまでの軌跡

このアルバムの大きな魅力の一つは、ビートルズの前身バンドであるクオリーメン時代の楽曲や、メジャーデビュー前のデッカ・レコードのオーディション音源が含まれている点です。さらに、初期のベーシスト、スチュアート・サトクリフが参加した楽曲や、リンゴ・スターに先立つドラマー、ピート・ベストが演奏した音源も収録されており、ビートルズ誕生以前から初期にかけてのサウンド変遷を辿ることができます。特に、スチュアート・サトクリフ参加楽曲が公式作品として収録されたのは、本作が唯一となっています。

アルバムは2枚組で構成されており、DISC1にはハンブルク時代のライブ音源や、EMIでの初セッション音源（後にデビューシングルとなった「ラヴ・ミー・ドゥ」を含む）などが収録されています。中でも注目すべきは、「ラヴ・ミー・ドゥ」の3つのバージョンが収録されている点です。ベスト、スター両バージョンの音源と、後にシングルとして発表されたバージョンが聴ける貴重な機会となっています。

DISC2には、イギリスのテレビ番組『Two of a Kind』やアメリカの『エド・サリヴァン・ショー』でのパフォーマンス音源が収録され、彼らの初期パフォーマンスの臨場感を味わうことができます。

25年ぶりの新曲「フリー・アズ・ア・バード」

そして、このアルバム最大の目玉と言えるのが、ジョン・レノンが生前に録音したデモテープを元に制作された新曲「フリー・アズ・ア・バード」です。レノンの未亡人であるオノ・ヨーコからデモを受け取ったポール・マッカートニーが、ジョージ・ハリスン、リンゴ・スターと共にレコーディングを行い、25年ぶりとなるビートルズの新曲が誕生しました。レノンのデモには未完成の部分があり、マッカートニーとハリスンがそれを補完したことで、この楽曲は完成したと言えるでしょう。

また、DISC1にはBBCセッションの音源も収録されています。「レンド・ミー・ユア・コム」は、1994年発売の『ザ・ビートルズ・ライヴ!! アット・ザ・BBC』には未収録だった音源で、後に『オン・エア〜ライヴ・アット・ザ・BBC Vol.2』にも収録されました。

アルバムのアートワーク

『ザ・ビートルズ・アンソロジー』シリーズのアートワークは、アルバム『リボルバー』も手がけたクラウス・フォアマンによるもの。1、2、3と並べると一枚の絵になる凝ったデザインが施されています。興味深いのは、非公式アルバム『Savage Young Beatles』のアートワークの一部が使用されている点で、ピート・ベストの顔がリンゴ・スターに被って欠けている部分があります。この欠けている部分は、後にピート・ベスト・バンドのアルバム『Haymans Green』のジャケット写真として使用されています。

まとめ

『ザ・ビートルズ・アンソロジー1』は、単なるベスト盤の枠を超えた、ビートルズの歴史と音楽性を深く知ることができる貴重な作品です。未発表音源から新曲まで、多様な楽曲が収録されており、ビートルズファンならずとも、彼らの音楽的進化と軌跡を堪能できる、必聴のアルバムと言えるでしょう。

もう一度検索