アウストラロピテクス・バーレルガザリ

アウストラロピテクス・バーレルガザリ（アベル）

アウストラロピテクス・バーレルガザリは、古人類学者ミシェル・ブリュネ率いる研究チームによって、チャドのコロ・トロ近郊のバーレルガザリ渓谷で発見された化石人類の一種です。発見者のブリュネは、亡くなった同僚への敬意を込めて、この化石に「アベル」という愛称を与えました。

発見された化石

発見された化石は、下顎の断片、下顎第二門歯、下顎の2つの犬歯、そして歯槽に付着した状態の4つの小臼歯です。当初「アベル」と呼ばれていたこの化石は、後にKT12-95-H1という標本番号で正式に登録されました。

発見場所と年代

KT12-95-H1は、東アフリカの大地溝帯から西へ約2500km離れた場所で発見されました。この化石の年代は、300万年から350万年前と推定されています。

種の分類をめぐる議論

KT12-95-H1の下顎には、アウストラロピテクス・アファレンシスとの歯の形態的な類似性が見られます。ウィルマン・キンベルらの研究者は、この類似性に基づいて、アベルは独立した種ではなく、アウストラロピテクス・アファレンシスの亜種であると主張しました。

1996年、ブリュネらはKT12-95-H1を新種とする論文を発表しましたが、当初は学会で広く受け入れられず、その証明も困難でした。この種が中央アフリカで発見された唯一のアウストラロピテクス属であるという事実は、未だに謎とされています。

意義

アウストラロピテクス・バーレルガザリの発見は、地理的な条件から、初期人類の進化における新たな視点をもたらしました。この化石は、人類進化の「第3の入り口」の存在を示唆する最初の証拠として、重要な意味を持っています。

参考文献

* ミシェル ブリュネ (著), 諏訪 元 (監修), 山田 美明 (翻訳)『人類の原点を求めて―アベルからトゥーマイへ』原書房、2012年7月。ISBN 978-4562047505。

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