アウトビアンキ・A111

アウトビアンキ A111について

A111は、イタリアの自動車メーカー、アウトビアンキが1969年から1972年まで製造していた小型乗用車です。全長が4メートルをわずかに超える4ドアセダンであり、同時期のフィアット・124とほぼ同じサイズで、両モデルはエンジンや基本設計を共有しています。ただし、A111はアウトビアンキのブランドで生産された車の中では最大クラスにあたります。

概要

A111の登場は、1964年に発売されたプリムラの後継モデルとして位置づけられています。設計を手掛けたダンテ・ジアコーサは、プリムラで初めて実用化した横置きエンジンとトランスミッションを前方に並べるジアコーサ式の前輪駆動方式を引き継ぎました。この技術は、1969年にフィアットが初めて展開したモデルであるフィアット・128にも適用されています。

ボディスタイルは特徴的な角ばったノッチバックスタイルの4ドアセダンで、フィアット・125のデザインをもとにした二灯式の矩形ヘッドライトが印象的です。このデザインは、当時のフィアット製4ドア車の典型を表しています。

A111が市場に登場した背景には、フィアット・124の前輪駆動版を試験する目的もあったのではないかという見方があります。しかし、その後フィアットから登場したフィアット・131は後輪駆動方式を採用し、前輪駆動のコンパクトカーが登場するのは1983年のレガータまで待たなければなりませんでした。加えて、A111の製造終了後も、同じくアウトビアンキやフィアットの車の中に直接的な後継車は存在せず、A111は僅か3年しか生産されませんでした。

A111は、販売開始から生産終了までエンジン・トランスミッション・ボディスタイルともに一貫して同じものであり、累計56,984台が製造された後、姿を消しました。このモデルの影響は意外な形で残っており、当時イギリスに在住していた本田技研工業の木澤博司がA111を購入し、日本に持ち帰ったことで初代シビックの開発に活かされました。こうした文化の交流も、A111の意義の一つと言えるでしょう。

A111以降のアウトビアンキは、スーパーミニクラスのモデル（A112やY10など）の生産に特化していきます。一方で、A111と同じクラスの車両はフィアットを中心に製造されており、同じ1969年にフィアット傘下に入ったランチアがその役割を担うことになりました。

まとめ

A111は、イタリアの自動車産業における一時期を象徴するモデルであり、デザイン、技術、さらには国際的な自動車産業への影響など、さまざまな側面から見ることができます。このように、A111はアウトビアンキというブランドの中でも特に注目すべき重要なモデルと位置づけられています。

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