アウト・オブ・アワ・ヘッズ

ローリング・ストーンズ『アウト・オブ・アワ・ヘッズ』：時代を彩った名盤

1965年、世界中を席巻したローリング・ストーンズのオリジナル・アルバム『アウト・オブ・アワ・ヘッズ』(Out Of Our Heads)は、バンドのキャリアにおいて重要な位置を占める作品です。イギリスとアメリカでそれぞれリリースされたこのアルバムは、収録曲やジャケット写真において違いがあり、その背景には当時の音楽シーンやレコード業界の慣習が大きく影響しています。

制作：アメリカとイギリスの融合

アルバムのレコーディングは、バンドの世界的なツアーの合間を縫って行われました。主要なレコーディングはロサンゼルスのRCAスタジオで行われましたが、一部はシカゴのチェス・スタジオでも行われたという、興味深い制作過程がうかがえます。このアルバムには、後にバンドの代名詞となる「(I Can't Get No) Satisfaction」が収録されており、この曲は全米チャートで1位を獲得、ストーンズの絶大な人気を決定づけました。

アメリカ盤は前作からわずか5ヶ月後にリリースされ、この「サティスファクション」の大ヒットもあり、ビルボードチャートで3週連続1位を獲得、プラチナレコードにも輝きました。ジャケット写真はデヴィッド・ベイリーによる撮影で、他のアルバムジャケット写真と同様のスタイルです。アメリカ盤には、「ラスト・タイム」や「アイム・オールライト」など、既にヒットしていたシングル曲に加え、新たなオリジナル楽曲も収録されています。オリジナル曲がカバー曲より多く収録されたのも、このアルバムが初めてでした。

一方、イギリス盤はアメリカ盤より2ヶ月遅れてリリースされました。ジャケット写真はアメリカ盤とは異なり、後に『ディッセンバーズ・チルドレン』で使用された写真が採用されています。イギリス盤では当時の慣習に従い、シングル曲は収録されておらず、代わりにアメリカ盤にはない新曲が追加収録されています。これらの新曲は1965年7月と9月のレコーディングで制作されたものです。イギリス盤ではオリジナル曲は4曲にとどまり、チャートではビートルズの『ヘルプ！』に次ぐ2位を獲得しました。

音楽性：R&Bカバーとオリジナル曲の融合

『アウト・オブ・アワ・ヘッズ』は、ストーンズが数々のR&Bの名曲をカバーしてきた歴史の集大成ともいえる作品です。同時に、オリジナル曲の割合が増え、バンドのソングライティング能力の進化も示しています。アメリカとイギリスそれぞれのバージョンにおいて、収録されているR&Bカバー曲やオリジナル曲の選定に違いが見られる点も興味深いです。これは、両国の音楽市場や、バンド自身の音楽的指向の違いを反映していると言えるでしょう。

このアルバムが特徴的なのは、リズム・アンド・ブルースのカバー曲が豊富であるにも関わらず、オリジナル曲が占める割合が大きくなったことです。このことは、彼らがもはや単なるカバーバンドではなく、独自の音楽性を確立したアーティストとしての地位を確固たるものにした転換期であったことを示唆しています。

レガシーと評価

『アウト・オブ・アワ・ヘッズ』は、2002年に「ローリングストーン」誌の「500 Greatest Albums of All Time」で114位にランクインするなど、現在でも高く評価されています。2002年にはイギリス盤とアメリカ盤両方がリマスターされ、SACDとハイブリッドCDとして再発されました。

まとめ

『アウト・オブ・アワ・ヘッズ』は、ローリング・ストーンズの音楽史において、重要な位置を占めるアルバムです。「サティスファクション」の大ヒット、英米盤の違い、そしてオリジナル曲とカバー曲のバランスなど、様々な要素が絡み合い、バンドの成長と変化を鮮やかに示しています。音楽史に残る名盤として、これからも多くの人々を魅了し続けることでしょう。

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