アオイラガ

アオイラガ

アオイラガ（学名: Parasa consocia）は、チョウ目イラガ科に分類される昆虫、いわゆる蛾（ガ）の一種です。その鮮やかな色彩と、幼虫が持つ毒のある棘で知られています。

分布

本種は東アジアの広い範囲に分布しており、具体的にはロシア南東部、日本（北海道から九州にかけて）、朝鮮半島、中国、台湾などで見られます。

形態

成虫

成虫はオスで開張（両翅を広げたときの最大幅）が31〜35mm、メスで35〜37mmとなります。性的二形による色彩の違いはほとんどありません。前翅と胸部背面の大半は鮮やかな緑色を呈します。前翅の根元側にあたる内横線の内側は濃い茶色、外縁側にあたる外横線の外側は通常の茶色となり、特にこの外縁部では翅脈に沿って短い濃褐色の線が複数並ぶ特徴があります。後翅および腹部背面の色は淡い黄色または淡い灰色です。

幼虫

終齢幼虫は体長が約25mmに達し、ナマコを思わせるような太く短い体形をしています。体色は鮮やかな黄色で、背部の中央にはコバルトブルーの目立つ縦帯が走り、その両側には小さな黒い斑点が列をなしています。前胸背には二つの黒い斑紋が見られます。体表全体には微小な円錐形の突起が密生しています。また、体の背部両側と側面には肉質の隆起が並んでおり、ここから多数の鋭い棘が生えています。これらの棘の先端には黒い針状の構造があり、これが毒針となっています。

繭

繭は卵のような形をしており、褐色をしています。

生態

アオイラガは年に1回または2回発生します。成虫は主に初夏の6月から7月にかけてと、晩夏の8月から9月にかけて羽化し、活動が見られます。幼虫は様々な広葉樹の葉を食草としますが、ヤナギ科の植物、ナシ、クリ、カキノキなどが主な寄主植物として知られており、特にヤナギ類で多く見られます。幼虫の姿は主に7月頃と9月頃に観察されます。越冬は、自身が作った繭の中で前蛹（蛹になる前の幼虫の姿で活動を停止した状態）の状態で冬を越します。

人との関係

アオイラガの幼虫の棘に不用意に触れると、棘の先端にある毒針が皮膚に刺さり、電気が走るような強い痛みを覚えます。この痛みは「イラガ刺し」と呼ばれ、樹木の剪定作業中などに被害に遭うことがあります。ただし、一般的にかゆみはほとんどなく、症状は比較的早く治まる傾向にあります。

分類

原記載: Parasa consocia Walker, 1865; List Spec. Lepid. Insects Colln Br. Mus. Pt. 32: 484.
タイプ産地: Hong Kong （香港）
亜種: 亜種区分はされていません。

類似種

アオイラガには形態的に類似するいくつかの種がいます。

ヒロヘリアオイラガ (Parasa lepida)：アオイラガによく似ていますが、前翅の褐色の縁取りがより幅広く、胸の幅と同じくらいの幅を持つ点で区別できます。日本（本州から沖縄にかけて）のほか、中国、インドネシアからインドにかけて分布します。
クロシタアオイラガ (Parasa hilarula*)：アオイラガと比較するとやや小ぶりで、後翅の色がより暗い褐色である点が特徴です。ロシア南東部、千島列島、日本（北海道から九州）、対馬、中国北部、朝鮮半島に分布しています。

これらの類似種も、幼虫が毒棘を持つことで知られています。

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