アオクサカメムシ

アオクサカメムシ (Nezara antennata)

カメムシ目カメムシ亜目カメムシ科に属する昆虫の一種。その名の通り、多くは鮮やかな緑色をしています。学名は `Nezara antennata` です。近縁種としてはミナミアオカメムシが知られています。

特徴

成虫の体長は12ミリメートルから17ミリメートルの範囲で、比較的大型のカメムシです。体色は通常、鮮やかな緑色ですが、同じ種でも個体によって変異が見られます。まれに、環境や遺伝的な要因により、黄色がかった褐色や、体に黄色の斑紋が現れる個体も存在します。これらの体色の違いは、特に越冬期に顕著になることがあります。体型はやや扁平で、典型的なカメムシの形をしています。触角は長く、5節からなります。

生態と分布

アオクサカメムシは、日本列島のほぼ全域、すなわち北海道から南西諸島まで広く分布しています。国外では、朝鮮半島、中国大陸、台湾といった東アジアの温暖な地域にも生息しています。これらの地域では、主に平野部から標高の低い山地にかけて、様々な植物が見られる環境で確認されます。

本種は、成虫の姿で冬を越す「成虫越冬」を行います。冬場の隠れ家としては、落ち葉の下や樹皮の隙間、建物の隙間などが利用されます。春になり気温が上昇すると活動を開始し、交尾、産卵を経て次の世代が孵化します。年間を通じた発生回数は、通常2回から3回程度です。比較的温暖な地域では、より多くの世代が発生することもあります。孵化した幼虫は脱皮を繰り返し、成虫へと成長します。

食性と農業被害

アオクサカメムシは非常に広範な食性を持つ「雑食性」の昆虫です。イネ科、マメ科、ナス科、ウリ科など、様々な植物の茎や葉、果実、種子から口吻（こうふん）を刺し込み、汁を吸います。

この広範な食性ゆえに、アオクサカメムシは農業分野において重要な害虫として扱われています。特に、トマト、キュウリ、ナス、ピーマンといった多くの夏野菜や、ダイズ、アズキ、インゲンなどの豆類に大きな被害をもたらすことで知られています。その他、イネ、麦、ミカンなどの果樹類、茶、アブラナ科の作物など、実に多様な農作物を加害します。

カメムシが植物の組織から汁を吸う際、その部位は生育が阻害されたり、変形したりします。例えば、果実を吸われると表面に斑点ができたり、内部がスポンジ状になったりして、商品価値が著しく低下します。特に豆類の莢や種子を吸汁されると、種子の生育不良や品質低下を招き、収穫量に直接的な影響を与えます。また、カメムシが分泌する消化酵素によって組織が壊死することもあります。

その他

アオクサカメムシを含むカメムシ類は、外敵から身を守るために特有の強い臭いを放つ防御物質を持っています。この臭いは多くの人にとって不快に感じられ、「臭い虫」として認識される要因の一つです。和名の「青臭」もこの性質に由来すると考えられます。農業におけるアオクサカメムシの防除には、栽培環境の管理や、必要に応じて農薬の利用などが検討されます。

関連項目としては、同じく緑色で似たような外見を持つアオカメムシが挙げられますが、両者は分類学的に異なる種であり、形態や生態にも違いが見られます。アオクサカメムシは日本の一般的なカメムシとして、私たちの身近な環境でもよく見られる昆虫です。

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