アオダモ

アオダモ：優美な樹形と堅牢な木材を誇る落葉広葉樹

アオダモ(学名: Fraxinus lanuginosa f. serrata)は、モクセイ科トネリコ属に属する落葉広葉樹です。別名コバノトネリコ、アオタゴとも呼ばれ、日本を含む東アジアに広く分布しています。その美しい樹形から庭木として親しまれる一方、野球のバットやテニスラケットなどの材料として、高い評価を受けています。

アオダモの名前の由来

和名「アオダモ」の「アオ」の由来は諸説あります。雨上がりの樹皮が緑青色になること、枝を水に浸すと水が青みを帯びること、青墨の着色剤として用いられたことなどが挙げられています。

アオダモの分布と生育環境

アオダモは、北海道から九州まで、沖縄を除く日本各地の山地に広く分布しています。国外では、南千島や朝鮮半島にも自生が確認されています。日当たりの良い場所から半日陰まで幅広く生育しますが、西日を嫌う傾向があります。生育速度は比較的遅く、深根性で乾燥した土壌にも耐性があります。

アオダモの特徴：樹皮、葉、花、実

アオダモは、樹高5メートルほどの高木ですが、中には15メートルを超える大木も存在します。樹皮は灰緑色から暗褐色で、成熟すると白っぽい斑模様が現れることが特徴です。枝は灰褐色でやや太く、皮目が目立ちます。

葉は奇数羽状複葉で、3～7枚の小葉が対生します。小葉は長楕円形で、縁には鋸歯があります。葉色は淡緑色で、秋には美しく黄葉します。

花期は4～5月で、雌雄異株です。白い小花を多数つけ、円錐花序を形成します。果実は翼果で、秋に熟すとピンク色を帯び、風によって散布されます。

冬芽は対生し、卵形で灰褐色の芽鱗に包まれています。葉痕は半円形または心形で、多数の維管束痕が確認できます。トネリコとアオダモの区別は、樹木や木材の状態では容易ではありません。

アオダモの利用：多様な用途と資源の保全

アオダモは、その美しい樹形を生かし、庭木として広く利用されています。また、堅くて粘り強い木材は、古くから様々な用途に用いられてきました。特に、野球のバットやテニスラケットなどのスポーツ用品の材料として高い人気があります。そのほか、家具、建築材、道具材などにも利用されています。しかし、近年は資源の減少が懸念されており、アオダモ資源の育成に向けた取り組みが進められています。

アオダモ材は、耐久性と適度な「しなり」を備えていることから、木製バットの最高級材として知られています。一本のバットを作るには、アオダモの成長に数十年を要します。そのため、近年では、アオダモ材の確保が困難になり、代替材としてホワイトアッシュなどが使用されるケースが増えています。

アオダモ材のバットは、ボールをバットにのせて運ぶような打法の選手に好まれる傾向があり、力強い打撃を好む選手は、より硬いメイプル材のバットを選ぶことが多いと言われています。

近年では、アオダモ資源の減少を懸念し、行政、野球関係者、バット生産者などが連携して資源育成に取り組んでいます。

アオダモの仲間

アオダモには、ヤマトアオダモ、マルバアオダモ、ミヤマアオダモなど、近縁種がいくつか存在します。これらの種は、アオダモと同様に、美しい樹形や堅牢な木材が特徴です。

参考文献

鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文『樹皮と冬芽：四季を通じて樹木を観察する 431種』
田中潔『知っておきたい100の木：日本の暮らしを支える樹木たち』
西田尚道監修 学習研究社編『日本の樹木』
正木覚『ナチュラルガーデン樹木図鑑』
* 山﨑誠子『植栽大図鑑［改訂版］』

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