アオリイカ

アオリイカ（障泥烏賊）とは

アオリイカ（Sepioteuthis lessoniana）は、ヤリイカ科アオリイカ属に属するイカの一種です。日本沿岸に分布するイカとしては大型であり、その美味と釣りでの人気から、多くの人々に親しまれています。

アオリイカの名前の由来

標準和名である「アオリイカ」は、漢字で「障泥烏賊」と書きます。これは、アオリイカの大きなひれが、馬具の「障泥」（あおり）に似ていることに由来します。また、地域によっては、外見が芭蕉の葉に似ていることから「バショウイカ」、藻場に産卵することから「モイカ」など、様々な別名で呼ばれています。

アオリイカの形態

アオリイカは、胴長が約40-45cmに達し、大きなものでは50cm以上、重さ6kgを超えることもあります。丸みを帯びた胴体の縁には、半円形のひれがあります。外見はコウイカに似ていますが、甲は薄くて透明な軟甲です。また、オスの背中には白い横線模様が見られますが、メスでは不明瞭です。

アオリイカの生態

アオリイカは通常、深場に生息していますが、春から夏にかけて産卵のために浅場に移動します。海藻や岩の隙間に、豆の鞘のような卵鞘を産み付けます。興味深いことに、産み付けられた卵は魚に食べられることがありません。これは、卵鞘の中にいるバクテリアが、魚が嫌がる物質を出しているためと考えられています。

アオリイカは夜行性で、夕方以降に活発に捕食活動を行います。孵化した幼体は、浅い海で小魚や甲殻類を捕食して成長します。夏には、体長数cmの幼体が落ち葉のように擬態し、波間に漂う様子が観察できます。幼体は沿岸の浅い海で体長15cm-20cmほどまで成長し、冬になると深場へ移動します。

アオリイカの分布

アオリイカは、ハワイ以西の西太平洋からインド洋の熱帯・温帯域に広く分布しています。日本では、北海道以南の沿岸に分布し、特に太平洋側では鹿島灘以南、日本海側では福井県の西側以南に多く見られます。

アオリイカの利用

漁獲

アオリイカは、主に大型個体が産卵のために浅場にやってくる春から夏にかけて漁獲されます。地域によっては、秋に浅場で成長した幼体を狙うこともあります。資源量を増やすために、人工産卵礁を海に沈める試みも行われています。

日本国内で捕獲されるアオリイカは漁獲量が少なく、高級品として扱われることが多いです。一般に流通しているものの多くは輸入品で、近年は東南アジアからの輸入が増加しています。

食用

アオリイカの肉質は弾力性に富み、甘みがあります。遊離アミノ酸が豊富で、旨みが強いのが特徴です。刺身、天ぷら、煮付け、寿司など、様々な料理に利用されます。徳島県牟岐町には、アオリイカとそのイカ墨を使ったアオリイカ黒焼きそばというご当地料理もあります。

釣り

アオリイカは、大型であること、港の防波堤などで手軽に釣れることから、釣り人にも人気があります。日本古来の「餌木」という疑似餌を使った釣りが広く親しまれています。また、活きた魚を泳がせてアオリイカに捕食させ、「ヤエン」と呼ばれる釣具を降ろして掛ける「ヤエン釣り」という釣法もあります。近年、アオリイカブームにより、ヤエン釣り人口も増加傾向にありますが、釣り人によるゴミ問題も発生しています。

養殖

2023年9月には、沖縄科学技術大学院大学の研究チームが、アオリイカの養殖に世界で初めて成功しました。これまで難しいとされてきたイカの養殖ですが、同チームはイカの「衣・食・住」の改善や、成長追跡ツールの開発などの方法で成功を収めました。

アオリイカの分類

ヤリイカ亜科から独立してアオリイカ亜科とする分類もあります。

アオリイカ属には、以下の種が含まれます。

オーストラリアアオリイカ (Sepioteuthis australis)
アオリイカ (Sepioteuthis lessoniana)
* アメリカアオリイカ (Sepioteuthis sepioidea)

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