アオルノス

アオルノスとアレクサンドロス大王の攻城戦

アオルノス（Ἄορνος）は、紀元前326年の春、マケドニアのアレクサンドロス大王が最後の攻城戦を行った場所である。この攻撃の詳細は、アッリアノスの『アレクサンドロス東征記』に記されており、著名な古典学者ロビン・レイン・フォックスによって「アレクサンドロスの戦歴におけるクライマックス」と評価されている。この地は、古代のバクトリアからインダス川への道筋上にあったとされ、その具体的な位置は現在のパキスタンあたりに比定されることが多い。

攻城戦の序章

アッリアノスによる記述では、アレクサンドロスは中央アジアを進発し、インダス川へ向かう途中、多くの町や村を攻略していった。しかし、彼にとっての大きな障害がアオルノスであり、そこに避難した敵は「野蛮人」と形容されていた。アオルノスは自然の要害であり、周囲を囲む岩山は高さ11スタディオン（約2,000メートル）にも及び、マケドニア軍内にはこれを突破するのはヘラクレスですら不可能だという噂が流れた。

このアオルノスの防衛は、アレクサンドロスの補給線にとっても最後の脅威であり、彼の軍はヒンドゥークシュ山脈から伸びる脆弱な補給路を維持しなければならなかった。アレクサンドロスは、彼の先祖であるヘラクレス以上の武勇を示そうとしたが、ヘラクレスですら攻略できなかったはずのこの要塞に直面していた。

攻撃と工事

アッリアノスの記録によれば、アレクサンドロスはその要塞の頂上に平坦な場所と天然の泉を見つけた。兵糧攻めでは敵を屈服させられず、彼に降伏した近隣の部族が最も攻め入るのに適した場所を示したため、アレクサンドロスはこの機会を利用する。彼の部下であるプトレマイオス1世と書記官ミリナスは、冗長な偵察を行い防御体制を強化した。その結果、アレクサンドロスは軍の編成に2日を費やすことになり、大土木工事を始める。

最初の工事で、攻城兵器を使うための橋を作成したが、急な傾斜が進行を妨げた。それでも3日目に入ると、アレクサンドロスは上からの落石に撃退され、攻勢の初期段階であるはずの攻撃が失敗に終わる。

攻略の成功とその後

しかし、アレクサンドロスは決して諦めず、急な岩肌をロープで引き上げながら登頂した。そして遂に頂上を制圧する。歴史家レイン・フォックスによれば、逃亡者たちを排除し、アッリアノスはここで大規模な虐殺が行われたと記述している。この戦いが終わると、アレクサンドロスは祭壇を築き、女神アテナに勝利を捧げる。

アオルノスの攻略により、アレクサンドロスはパンジャーブ地方への進出が容易になり、彼の名声はインドの地にまで響き渡ることになった。その後、ヒュダスペス河畔の戦いという新たな挑戦が待ち受けることになる。

アオルノスの位置

アオルノスの名称は、現地の名称をギリシア語に翻訳したものであり、ストラボンによれば「鳥さえも上がらない高い場所」を意味している。また、インド・イラン語派の言語では「要塞化された場所」を示すともされる。アッリアノスの記述によると、アオルノスはインダス川の右岸に位置し、正確な場所は不明だが、冒険家オーレル・スタインによって、現在のパキスタンにあるピールサル山と同定されている。

このピークは、険しい地形を持ち、インダス川上流の渓谷に囲まれており、スタインはこの場所に大王の祭壇があることを主張したが、他の学者であるジュゼッペ・トゥッチは異なる地点を提唱している。アオルノスの特定には多くの議論があり、その歴史的背景を考慮することが重要である。

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