オーレル・スタイン

サー・マーク・オーレル・スタイン：中央アジア探検の巨人

サー・マーク・オーレル・スタイン（1862年11月26日-1943年10月26日）は、ハンガリーで生まれたイギリスの考古学者にして東洋学者です。彼の名は、中央アジアにおける広範囲にわたる探検と発掘調査によって、世界的に知られています。スタインの探検は、シルクロード研究に多大な貢献を果たし、古代文明の謎解明に大きく寄与しました。

アカデミックな出発から中央アジアへ

ブダペストにユダヤ系ハンガリー人の家庭に生まれたスタインは、ヨーロッパ各地の名門大学で学びました。ドレスデン大学、ブダペスト大学、ウィーン大学、ライプツィヒ大学、テュービンゲン大学、そしてオックスフォード大学とロンドン大学で研鑽を積んだ後、1888年、ロンドン大学時代の教授であるローリンソンの推薦により、インドへと渡りました。当初はラホールの東洋学校の校長として職に就き、後にカルカッタ・マドラサ（インド最古の大学の1つ）の校長も務めるなど、インドにおける教育にも貢献しました。

東トルキスタン探検：ニヤ遺跡と敦煌文書

1900年、スタインは彼の探検家としての生涯を大きく彩ることになる東トルキスタン探検に乗り出します。新疆省における最初の探検では、ホータン近郊のニヤ遺跡を発掘調査し、数多くの古代遺物を発見しました。この探検の成功は、彼をインド古跡調査局へと導き、1904年には同局のメンバーとなります。

1906年には二度目の探検を行い、敦煌において莫大な数の仏教文書、絵画、そして仏像を発見しました。これらは、敦煌文書として知られ、現在も世界中の研究者によって研究され続けている貴重な資料です。この偉業により、1909年には王立地理学会から金メダルを授与され、その功績は広く認められました。また、1910年にはC.I.E.(インド帝国勲章コンパニオン)、1912年にはK.C.I.E.(インド帝国勲章ナイト・コマンダー)に叙せられ、「サー」の称号を許されました。1913年から1916年にかけては、ハラホト遺跡からイラン東南部を経てインダス川上流までの広大な地域を調査しました。

西アジアへの探検とインダス文明

東トルキスタンでの成功に続き、スタインの探検は西アジアへと広がっていきました。1926年にはインダス川上流とスワート川流域を調査し、アレクサンドロス大王のインダス川渡河地点やウディヤーナ遺跡を発掘調査しました。1930年には第四回目の中央アジア探検を計画しましたが、許可が下りず、日本への訪問を挟んで西アジアの調査に集中しました。1927年から1938年にかけてはイランを調査し、モヘンジョダロやハラッパーといったインダス文明遺跡を研究し、メソポタミア文明との関係性の解明に貢献しました。さらに、1938年から1939年にはシリア、ヨルダンから北西イラクにかけてのローマ帝国の辺境の防御施設であるローマ長城の調査を行いました。

スタインの遺産

スタインの探検は、数々の貴重な発見をもたらしただけでなく、膨大な調査報告書という形で、後世へと繋がる遺産を残しました。『砂に埋もれたホータンの廃墟』、『コータンの廃墟』、『中央アジア踏査記』など、彼の著作は、現在も世界中の研究者によって参照され、シルクロード研究において重要な参考文献となっています。1943年、アフガニスタンで病没したスタインですが、彼の残した功績は、現代においても中央アジア研究、そしてシルクロード研究を支える礎となっています。彼の探検は、単なる遺跡の発掘調査にとどまらず、古代文明の交流史、文化史、そして宗教史を理解するための、かけがえのない情報を提供してくれたのです。スタインの生涯と業績は、冒険と知の探求、そして人類文明への貢献を体現するものです。彼の名は、これからも長く人々の記憶に刻まれ続けるでしょう。

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