アガル・タマル

アガル・タマルの概念と歴史

アガル・タマルとは、モンゴル帝国が征服地において領主が受け取る税収の分配を指します。特に華北地域におきましては、被征服民が年に一度、五戸ごとに「絲」と呼ばれる絹織物の原料を供出することが義務付けられ、これを「五戸絲」と称しました。本記事では、このアガル・タマルの起源やその後の変遷について詳述します。

アガル・タマルの語源と歴史的背景

アガル・タマルは、中国語史料の『元史』に登場し、ペルシャ語の『集史』では同様の表現が見られますが、その語源についてはさまざまな説があり、確定的な見解はありません。モンゴル高原の遊牧民族において、捕虜や征服地の収入は、指揮官に配分される慣習がありました。この伝統は、キタイ帝国の「頭下軍州」制度に受け継がれました。1206年にモンゴル帝国が成立すると、チンギス・カンは諸王・功臣に土地を分配し、彼らが自らの収入を得る仕組みとしてアガル・タマルが形成されました。

五戸絲とその徴収方法

華北におけるアガル・タマル徴収の具体的な形態は、地元の軍閥・汉人世侯と絡み合い、オゴデイ皇帝のもとで新たな税制が導入されました。五戸ごとに彼らが供出する「絲料」が、税収の一部として諸王や功臣に分配され、これが後に「五戸絲」として知られるようになります。これは、納税単位が「1斤」であり、1斤のうちの一部が申央に、残りが投下領主に納められる形で行われました。

例えば、五戸から徴収された税収全体の約7割は中央政府に、残りの3割が地方の投下領主に与えられる仕組みとなっていました。しかし、この徴収制度は、特にオゴデイの死後の内紛や反乱によって徐々に混乱をきたし、再分配の試みが行われることになります。

江南地方におけるアガル・タマル

また、江南地方でもアガル・タマルの徴収が試みられましたが、混乱から始まったこの制度は、一時的に紙幣（交鈔）が配分される方法に切り替えられました。1戸ごとの徴収額は小さく、最終的には江南戸鈔という形で定着していきました。このように、江南では華北とは異なる方法が模索されつつ、アガル・タマルの概念が引き継がれたのです。

結論

アガル・タマルは、モンゴル帝国の税収システムの重要な部分であり、被征服地からの税の収集や分配において大きな役割を果たしました。五戸絲と江南戸鈔という異なる徴収形式が見られるように、状況に応じて変化し続けてきました。アガル・タマルは、モンゴル帝国の内部構造や勢力図を理解するうえで欠かせない要素であり、その影響はいまだに歴史を通して形作られています。

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