アキカラマツ

アキカラマツ（秋唐松）とは

アキカラマツ（学名：Thalictrum minus var. hypoleucum）は、キンポウゲ科カラマツソウ属に分類される多年草です。別名としてタカトグサ（高遠草）とも呼ばれています。この植物は、初夏から秋にかけて、カラマツの葉を思わせる黄緑色の小さな花を多数咲かせることから、「秋カラマツ」と名付けられました。

分布と生育環境

アキカラマツは、日本国内では北海道から本州、四国、九州、そして南西諸島にかけて広く分布しています。国外では、朝鮮半島や中国にも分布が見られます。生育環境としては、水はけが良く日当たりの良い場所を好み、山野の草地や林の周辺、路傍、丘陵地などに自生します。ただし、沖縄島では山地に生育するなど、地域によって生育環境に違いが見られます。特に沖縄島産のものは、他の地域のものと比べて小型で、生育環境も異なるため、詳細な調査が必要とされています。奄美大島と沖永良部島での分布については、標本が存在しないため、確実な情報とは言えません。

特徴

アキカラマツは、高さ60〜130cm程度に成長する多年草です。茎は直立し、上部で枝分かれします。葉は互生で、3出複葉であり、小葉は円形から広卵形、扇形など多様な形をしています。小葉の先端は2〜3裂し、長さは約1cmです。

花期は夏から初秋（7〜9月）で、茎の先端に円錐花序をつけ、多数の淡黄白色の小花を咲かせます。花弁はなく、花弁のように見えるのは、長さ2mm程度の長楕円形のがく片です。開花すると、がく片はすぐに落ちて、糸状の雄しべが目立つようになります。

果実は痩果で、長さ約2.5mmの紡錘形または楕円形をしており、8つの筋（稜）があります。1〜4個が集まって上向きに付きます。種子は約2mmの狭卵形で、先端が尖っており、表面にはっきりとした隆条があります。

アキカラマツは、同じカラマツソウ属のカラマツソウとよく似ていますが、カラマツソウは茎を折ると中が空洞であること、花の色が白色であること、果実が垂れ下がることなどから見分けることができます。

また、アキカラマツはコムギの赤さび病菌の中間宿主となることが知られています。

薬用としての利用

アキカラマツは、古くから民間薬として利用されてきました。特に、乾燥させた茎を煎じて服用すると、腹痛、下痢止め、食あたり、食欲不振などに効果があるとされています。これは、アキカラマツに含まれるマグノフロリンやタカトニンといった成分が、胃の粘膜に直接作用し、胃液の分泌を促進して胃の活動を活発化させるためだと考えられています。ただし、生育地によって含有成分に差が生じることが報告されています。

民間療法では、胃腸の調子が悪い時に、乾燥させたアキカラマツ（高遠草）を1日量5〜10gを水600ccで半量になるまで煎じて、食後に3回に分けて服用する方法が知られています。また、胃弱の人は、高遠草を粉末にしたものを1回0.3〜0.5gを毎食前に水で飲むという用法もあります。

なお、同じキンポウゲ科の植物であるカラマツソウ、オオカラマツ、シキンカラマツ、ツクシカラマツなどは、作用の強い成分を含む毒草として扱われており、薬用には用いられません。

保護上の位置づけ

アキカラマツは、生育地である一部の地方公共団体によって、レッドデータブックに掲載されています。

鹿児島県: 準絶滅危惧
沖縄県: 絶滅危惧IA類

これらの指定は、アキカラマツの生育環境の悪化や個体数の減少を示しており、保護の必要性が高まっていることを示しています。

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